恒例の学校行事。
年に数回の学校行事。
みんな大嫌い、学校行事。
July(七月)
待ち侘びたチャイムの音。
それと同時にクラスメイト達は溜め息を吐き、クライサは両腕を頭上高く伸ばす。
外では蝉の声が響き、プールの授業も始まった七月。
この時期のイベントと言えば、七夕と
期末テスト。
普段より早く帰してくれるのは嬉しいが、家でひたすら勉強なんて正直嫌。
ただでさえ夏は暑くて嫌いなのだというのに、つまらない勉強に時間を費やしたくない。
そして今、このチャイムと同時に、試験勉強の呪縛から解き放たれたわけだ。
「クライサちゃん、どうだった?」
「バッチリ。ただ歴史だけちょっと心配かな」
前の席のアズハに自信満々に答えた。
心配だ、とは言っているが、実はそれほど気にしていなかったりするが。
「いいなー、クライサちゃん達って本当に頭いいよね。羨ましいよ」
「達?」
「エド君とかコスモスさんとか」
そこにウィンリィは含まれないんだな、なんて思いながら自席から少し離れた席へと目を向ける。
そこに座っている金髪の少女は、やはり調子が良くなかったのか、机に突っ伏して撃沈していた。
「まあ、一応あたしら錬金術師だし。少なくとも数学や科学は出来なきゃね」
「そっかー…いいなぁ、私も錬金術習いたいなぁ…」
「やめとけやめとけ、今から教わろうとしたって勉強する事が増えるだけだぞ」
「そうだね。どうせやるんだったら、高校卒業してからの方がいいかも」
「そっかー」
エドワードやアズハを含め、近くの席のメンバー数人とのお喋りで時間を潰していると、担任である黒髪の教師が入ってくる。
国語担当の彼は、実はクライサの兄なのだという事は、意外と有名だったりする。
「エド、四組行こうよ」
「おう。じゃあな、アズハ、ツルギ」
「またねー」
「ああ、またな」
下校の許可が出ると、教室内がざわつき始める。
テストの疲れを癒すべく世間話にいそしむ者、帰り支度をする者。
手早く筆記具を鞄に詰め込むと、クライサはエドワードと共に教室を後にした。
テスト終了後のウィンリィをそっとしておいてやるのは、中学時代からの暗黙の了解である。