窓の外は、雨。





June(六月)





厳しい割に物凄くその授業がつまらない教師が退室すると、クラス中から大きな溜め息が聞こえた。
あの教師の授業は、妙に長く感じる。
つまらない上に、居眠りをしようものなら瞬時にチョークが飛んでくる。

「寝られんのが嫌なら、少しは授業方法改善してくれればいいのにね」

「言うだけ無駄だろ。自分の授業がつまんねぇって絶対気付いてないぞ、アイツ」

隣の席に腰掛けるエドワードの言葉に頷きながら、クライサは窓の外へと目を向けた。
朝から降り続く雨。
梅雨時だから仕方ないとは分かっていても、こう何日も悪い天気が続けば気も滅入る。

そういえば先週もずっと雨だったな。
グラウンドが使えなくて、体育も屋内でやってたんだっけ。

思い出すのは、外での体育の授業が潰れたり、登下校の際に水溜まりなどで足元が濡れたり、洗濯物が乾きにくかったり。
そんな、良いとは言えない出来事ばかり。

「…梅雨なんて大っ嫌いだ」

元々、雨自体嫌いなのだ。
空はクライサの髪とはかけ離れた色をしているし、外は晴れている時よりずっと暗いし。


雨が降っていると、大好きな夕焼けが──トワの眼を思い出すあの色が、見られないから。


『雨上がりには、綺麗な虹が見られるよ』

虹なんて見られなくていい。
夕焼けが見たい。

(雨なんて)

雨なんて、嫌いだ。


「クライサ」

机に突っ伏していると、聞き慣れた声が耳に届いた。

「……トワ」

休み時間に入ったため隣のクラスから遊びに来たのだろう、トワが彼女の机の前に立っていた。
不機嫌そうにしている彼女に、きょとんとした顔で首を傾げている。

「どうしたの?」

「雨が嫌なんだってよ」

トワの問いに答えたのはエドワードだった。
彼を睨みつける少女の視線にも、大して動じる事もせず飄々としている。

「雨?」

「……違うよ。さっきの授業がつまんなかったから、なんか疲れただけ」

だから気にしないで、と笑って見せるが、トワは納得していない様子だ。
どうしたものか。心配させてしまったみたいだ。





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