桜の咲き誇る季節、四月。
この春めでたく高校生となった少女は、ある人物と運命的な出会いを果たした。
April(四月)
四月の初め。
国立学校であるアメストリス学園、高等部の入学式。
この春めでたく高等部へと進学になったクライサは、クラス分けの書かれた貼り紙に目を滑らせていた。
空色の長い髪を携えた少女。
名はクライサ・リミスク。
この学園の中等部に所属していた、所謂内部生である。
(三組か)
貼り紙を見れば、少女の名は『一年三組』の欄に書かれている。
同じクラスに知り合いはいるだろうか、と前後に目を向けると
「クライサ!」
その名を発見した途端、背後から声をかけられた。
「エド、ウィンリィ!」
振り返れば、中等部時代三年連続で同じクラスだった二人、エドワード・エルリックとウィンリィ・ロックベルが歩いてくる。
どちらも新品の高等部の制服がよく似合っていた。
「クラス分け見た?」
「見た見た。あたし達、また同じクラスだね」
「腐れ縁ってやつか?」
高校に入っても同じクラス。
他に五クラス以上あるのに、三人揃って同じ組になるとは。
やはり三人には何かしらの縁があるのだろうか。
「結構外部生入ってきたんだね」
「そうだなー。うちの学校、割と人気あるらしいし」
「ふーん」
式が始まる前に、まず自分のクラスに行かねばならない。
生徒達が入り乱れ、はしゃぎ合っている中を抜け、教室に向かうべく階段の方に足を進めた。
(あ、)
その途中、一人の少女の姿がクライサの目にとまった。
階段付近でこちらを向くように立っている少女。
どうやら誰かを待っているらしい。
彼女が気になった大きな理由は、その珍しい髪色だった。
桃色とも紫色とも言い難い色。
美女桜色。
彼女の真紅の眼とよく合っている。
(きれい)
素直にそう思い見つめていると、ふと少女がこちらを向いた。
あ、と声を上げる前に合わさった、二つの視線。
何を言うでもなく、ニコリと微笑んだ彼女の姿は可愛らしく、美しくて。