「お・に・い・ちゃ・ん」
「た・い・さ」
呼ばれたのはロイ。けれど、彼女らの殺気は部下たちにも向けられている。恐怖に歪んだ顔。対称的に、少年少女は不敵な笑顔。
物陰から様子を窺っていたリオは、見目麗しい少女らの背後に見える黒いオーラに、震えが止まらなくなったとか。
「クライサ」
「トワ」
屈託のない笑顔でハイタッチ。
それを眺める少年たちも微笑み顔。
地面とご挨拶中の大人たちを踏みつけて。
(ああ、なんて)
(幸せな、時間)
願わくば、この日常が一日でも長く続きますように。
「と、いうワケで」
「残るはアンタだけだよ、リオ」
トワとクライサ。建物の陰に息を潜めて隠れる青年に、刃のような、氷のような目を向ける。笑ってはいるが、もちろん目はマジだ。
「逃げるような素振り見せたら、両足撃ち抜くからな」
「機械鎧にしたくないなら、大人しくこっち出てこいよ」
リオンとエドワード。彼は拳銃のセーフティを外し、また彼は右手を甲剣に錬成する。どこからどう見ても、マジだ。
「……すんませんでした」
これ以上彼女らを怒らせたくはないし、こんな所で命を落としたくはない。地面に転がる元同僚たちを一瞥して、自分も仲間入りするだろうことを覚悟しつつ。リオは、その一歩を踏み出した。
「あ、また質問し損なっちゃった」
「何を?」
あの漆黒に、再び会う日は来るのか。
それはまた、別の話。
END.
【H20/04/15】