小柄な身体を抱き止めて、ふらついた背に手が触れて。
リオンの両手に支えられたトワの腕の中で、クライサは幸せそうに笑った。

しょうがないなぁと言いたげな顔に視線を送ると、彼女もまた笑顔になる。その背後の彼や金色の少年は、呆れたように溜め息を吐いていた。

「大好きだよ、トワ」

着地する気がないことを、彼女なら気付いてくれると信じていた。
ただ落ちるだけの身体を、彼女なら受け止めてくれると信じていた。

もちろん、トワが動かなければ、クライサは下手すれば大怪我を負う可能性もあったわけだ。けれど、彼女はそんな心配を脳裏に浮かべることすらしなかった。
そして、彼女の思惑通りというか、信じていた通りに、トワはクライサを抱き止めてくれた。

「私も。待たせてごめんね」

また、トワ側としても、クライサの信頼が必要だった。彼女がトワを信じて全てを委ねたからこそ、無事に少女を受け止められたのだから。

(不思議だね)

二人が出会ったのは、ずっと昔のことではないのに。
まるで生まれた時から一緒にいたように、絶対の信頼関係が彼女らの間に根付いている。
ロイやエドワードにでさえ無意識的につくっている壁も、トワとの間には感じられない。

(それが、一方的なものじゃなければ、いいんだけど)



親しい者に裏切られることは、親しい者が姿を消すことは、何より辛くて苦しいけれど。
それを恐れて信じるのをやめることは、何より哀しいから。

(トワは、あの人とは違うから)

あの人とも、兄とも、エドワードたちとも違う。
誰より大切で、大好きで、かけがえのない、存在。
無意識に、無条件で、信頼出来る存在。
こういう相手がいるというのは、本当に幸せなことだと思う。


「さて。それじゃ」

「制裁のお時間と参りましょうか」

姫と騎士の笑顔は、大人どもへ。
空色と真紅を交互に見やり、色彩の差にクラクラする。そのまま気絶してしまいたい気持ちに、ロイたちはなった。

「姫、トワ」

「オレたちにも分け前よこせよな」

茶色と金色も加わって、彼らは鉄拳制裁のフルコースを味わうことがほぼ確定。
さあ、どうしてくれようか。





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