見られた……!!
見られた。
これは確実に見られた。
トワ不足で堕ちまくっていた自分の姿を。
なんてこった。
バスケットと落ちてしまった数個の果物を拾い上げ、気を取り直さんと窓へ向かう。
そういえばこのフルーツバスケット、なんかイチゴの割合が多いんですけど。
もしかして、あたしがイチゴ好きだということを知って用意したのか?
なんだか有り得る。あの架空の名をもつ彼ならやれそうな気がしてきた。
これがあたしの大好物だと知っているのは、極少数の人間だけなんだけど。
(ま、いっか)
再び窓から外を眺めると、とうとう三人に捕まってしまった大人どもが見える。
そういえば、先ほど見た時もそうだったが、彼らの中にリオの姿がない。恐らく、ロイたちとは違う方向に逃げたのだろう。三十六計逃げるにしかず、ってところか(なんだか用法が間違ってる気がするけども)。
なんか最近ヒューズ中佐に似てきたな、リオ。ぼんやりとクライサは思うのだった。
「クライサ!」
呼ばれた名に視線を動かすと、こちらを見上げるトワと目が合った。
大好きなその笑顔に、心の底から安堵する。その反面、それに重なった笑顔の持ち主の台詞を、つい思い出してしまった。
『裏切られることを、考えたことはありますか?』
「……」
明るいものに変わらない、むすりとした顔に、笑顔の主は首を傾げた。手を振り返してくれてはいるけれど、なんだか不機嫌。かと思えば、何を思ったか、空色は窓枠に足を乗せ始めた。
「お姫!?」
「クライサ!?」
二階とはいえ、普段の彼女なら容易に飛び降りることが出来る高さだとはいえ、今のクライサはだいぶ感覚が鈍っている。
ブレダやロイの制止の声を無視して、いつものように、少女は華麗に飛び立った。
透き通るようなそこを舞う、同じ青空色に、目眩がしたような気がした。