「……ホークアイ中尉。司令部内での発砲は?」
「許可しましょう。ただし、」
「ただし?」
「全員捕獲して帰ってくること」
「了解」
鷹の眼に頷き、愛用の拳銃を握ったのはリオン。
エドワードがコートを脱ぎ捨て、それをアルフォンスが預かる。
クライサをベッドに残したまま、トワが腕を回しながら立ち上がった。
「姫はここで待ってろよ」
「まだ体調が万全じゃないんだからな」
「奴らの捕獲は私たちに任せて」
「わかった。いってらっしゃい」
狙撃手、鋼、仮想の背中を見送る。実際のところ、まだ本調子ではないので、無理についていくことはしない。彼らを信じて、帰りを待つ。
「それじゃあ、紅茶でも淹れましょうか」
「あ、ボク手伝います」
すぐに捕まえて帰ってくるだろうからと、給湯室へ向かうホークアイとアルフォンスが出ていき、室内にはクライサ一人。だが一瞬感じた寂しさも、窓の外から聞こえた幾つもの声に、吹き飛んでいった。立ち上がり窓のほうへ歩いていくと、地上に見える騎士たちの姿に笑みが溢れた。
大人どもを追い立てる、三人の若者たち。自分のために怒ってくれているのだと思うと、嬉しくて仕方ない。
「随分と大切にされているみたいですね」
(ん?)
背後から声がして、振り返ると、廊下に繋がる扉の前に人影を発見した。いつの間に入ってきたのやら。しかも、以前拳を交えたことのある、そして先程探していた軍人じゃないか。
「架空くん」
「リミスク少佐が体調を崩されたと聞いたので。具合はいかがですか?」
これ、お見舞いの品です。
あ、ども。
差し出されたフルーツバスケットを、ほぼ反射的に受け取る。貼り付けられた笑顔は以前と変わらないもの。彼女に似た、笑顔。
「大切にされているみたいですね」
同じ台詞を、もう一度。その言葉の裏に隠れる感情を読み取れない。
「……あたしだって、大切にしてるよ」
友人たちを、
兄や部下たちを、
この、日常を。
失いたくない、から。
「良いことです。ただ、」
「なに?」