赤星は廻る | ナノ



04

 



カウフマンに別れを告げ、エステルとラピードを拾ってから向かったのはデイドン砦の西。クオイの森。鬱蒼と生えた木々に遮られ、足元を照らす日光は限られている。薄暗いそこに足を踏み入れるのを躊躇ったエステルを振り返り、ユーリは言った。

「オレは構わないけど、フレンはどーすんの?」

「……わかりました。行きましょうっ」

ここで引き返すわけにはいかないからと、彼女は気合いを入れるように言って足を踏み出す。その様子を微笑ましく眺めていたアカと、エステル越しに目を合わせたユーリは、小さく肩を竦めて苦笑した。
薄暗い森の中。しかも呪いが降りかかるなどと言われているような場所だ。世間知らずのお嬢様でなくとも進入するのは遠慮したいだろう。

「そのフレンってのは、エステルの恋人なのかい?」

「えっ!?」

「だろ?貴族のお嬢様がこんなとこまで来るくらいなんだし、ただの友達のためとは考えられねぇよな」

「ねぇ?」

「ちっ、違います!!そんなんじゃないですからっ!!」

「本当に?」

「本当です!」

といった具合にエステルをからかいつつ、進んでいった森の中。少しひらけた場所に出たユーリは、そこに何かを見つけて足を止めた。

「何だ、あれ?」

「んー?……魔導器……じゃないかね。もう動いてないみたいだが」

「ふーん……。さて、ここらで一休みするか?」

「わたしは大丈夫です。まだまだ行けますよ」

ずんずんと歩いていくエステルが意地を張っているのは明白で、その背中を見守るユーリは肩を竦める。お城住まいのお嬢様がこんなところにまで来て、疲れていない筈も、心細くない筈も無いのだ。よほどフレンのことが心配なのだろう。アカも苦笑した。

「あれ、これは……」

更に道を進もうとしたエステルが、地面に倒れた魔導器に近付く。何か気になることでもあったのか。魔導器の魔核部分に顔を近付けた彼女を眺めていたユーリたちの前で、魔核が突然光を発した。

「きゃあ!」

「うわっ!?」

辺り一帯を照らすようなそれは一瞬だった。光を避けるように顔の前に出した手を下ろし、魔導器に何か変化があったのかとアカが歩み寄る。しかし彼女がそれに触れる直前、どさりと音を立ててエステルが倒れた。

「!?」

「エステル!?」





一体何が起きたっていうんだ?





 


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