26 翌朝。 フェローとエアルクレーネについてはまず情報収集からだと、宿を後にして街の中央に行くと、剣呑な雰囲気の男二人の姿があった。武器を持ち、今まさに暴力沙汰に発展してしまいそうな彼らの様子を、道行く人々は遠巻きに眺めている。そんな中、二人を止めようと必死に声を震わせているのはラーギィだった。 「お、おふたりとも、や、やめてください。こんな街中では、み、皆さんにご迷惑が…」 「外野はすっこんでろ!!」 一方の男がラーギィに斬りかかろうとした時、ユーリが剣で男の武器を払う。もう一人の男が突き出そうとした剣は、ジュディスの槍に払われた。 「なっ!」 「私が悪いのなら後で謝るわ。あなたたちが悪いのだとは思うけれど」 「ちっ……」 男たちが去っていくと、エステルがラーギィに大丈夫かと声をかける。 「あ、こ、これはご、ご親切にどうも。あ、あなた方は、た、確か、カウフマンさんと一緒におられた…」 「ギルド『凛々の明星』だよ!」 「あんたは…『遺構の門』のラーギィだっけ?ケンカを止めたいなら、まずは腕っ節つけな」 「あ、はい、すいません。ど、どうも……」 それからラーギィは少しの間黙り込み、何かを思いついた様子で顔を上げた。 「あ、あの、皆さんを見込んで、お願いしたいことが、ありまして…」 『遺構の門』の頼みなら放っておけない、とカロルは目を輝かせるが、その視線を受けたユーリは肩を竦ませた。内容にもよる。ラーギィに話の先を促すと、ここで話すのはちょっと、と困った様子で辺りを見回し、ある場所に視線を定めて頷いた。闘技場まで来てほしい、そこで話すと。そう言って駆けていった背中を見送ってから、レイヴンが胡散臭げに零す。 「人に聞かれたくない話か……なんかヤバそうだねぇ」 「どうすんだい、今回も『ほっとけない』のかい?君らに得がある話とは限らんが」 アカが尋ねれば、カロルは俯きがちに呟く。五大ギルドの一角、『遺構の門』に顔が通れば、ギルドでの名も上がる。出来たばかりの弱小ギルドにはおいしい話だ。しかし、ユーリもジュディスもすぐには頷かない。 「欲張るとひとつひとつがおろそかになるわよ。今の私たちの仕事は…」 「フェロー探索とエステルの護衛だからな」 「そうだね……うん、気をつける」 とは言うものの、話を聞いてから受けるかどうかを決めても遅くはないだろう。手を貸す気にならなかったら断ればいいのだ。そう考えて、とりあえず闘技場に向かうことにした。 『ろくな話』であることを願う ×
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