03 花の街ハルルに向かうには、帝都の北にあるデイドン砦を通らねばならない。しかしアカたちがその門を潜ろうとしたちょうどその時、魔物の来訪を知らせる警鐘が鳴り響いた。 「時期でもないのに平原の主が出るとはねぇ」 「そんなに珍しいことなのか?」 「長いこと傭兵やってるが初めて出会したよ。ユーリくんてば、なんか憑いてんじゃないかい?」 「はは、オレもそんな気がしてきたわ……」 平原の主と呼ばれる巨大獣(ギガントモンスター)が魔物の群れを率いてやってきたのだ。魔物が門に体当たりをする音が地響きと共に聞こえてくる。この間は当然ながら門を開けることは出来ず、ハルル側に抜けようとする者は足止めをくらうことになってしまう。 しかしフレンに会わねばと意気込むエステルは、ここでただ待ってはいられないと、砦にいる人々に他の道を尋ねに行った。その後にラピードが続く。 「あら、アカじゃない」 こちらも聞き込みに行こうかとユーリとアカが歩き出した途端、眼鏡をかけた赤髪の女性が彼女を呼んだ。 「カウフマン」 「なんだ、知り合いか?」 「ああ。『幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)』っつーギルドのボスさ」 「へぇ。ギルド、ねぇ……」 護衛らしき武装した男を一人従え、若いながらに威厳のある女性は胸の下辺りで腕を組む。彼女の名はメアリー・カウフマン。商業ギルド『幸福の市場』の社長(ボス)で、アカも時折彼女の護衛を依頼されることがあった。 「ねぇアカ、私困ってるのよ。雇われる気は無い?」 「あの群れン中突っ切るから護衛しろって?勘弁してちょーだいよ。いくらうちでも、ありゃムリムリ」 「残念ね。でも、あなたたちもここを通りたいんじゃないの?」 「あんなとこ入ってくぐらいなら、クオイの森通ったほうがずっとマシさね」 「クオイの森?」 「……あ」 いかにも口を滑らせた風にアカの顔が歪み、ユーリの目が光る。 「お前、抜け道知ってたな」 「……ごめんなさい」 知ってた。ユーリに、というかむしろエステルにごめんなさいだ。 クオイの森というのはこの砦の西にあり、通り抜ければ確かにハルルに行ける。しかしそれをアカが知っていてなお黙っていたということは。そしてカウフマンらもそこを通ろうとしないということは。 「何かお楽しみがあんのか」 「……クオイに踏み入る者には呪いが降りかかるって噂があんのさ。厄介事に巻き込まれんのも面倒だから黙ってたのに……」 まあ、面白そうではあるがね SKIT ┗砦のアレ ×
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