13 「騎士団隊長が兵装魔導器をねぇ……」 「ドンに報告するか?」 「いや、まだ様子見たほうがいいだろう。キュモールって奴の独断なら騎士団には関係ないんだろうし、下手に刺激すると友好協定がなかったことにされちまう」 見張りの騎士には、通らせてはもらえるがやはり邪魔なのでご退場いただき(なんか泣きながら走っていったのだが、もう追及はすまい)、いつもの服に着替えてくると言って宿に向かった四人をユーリとアカ、ラピードは待つ。 「それに、そうならないように下行くんだろう?だったら必要ないさ」 「だな」 戻ってきた四人と合流し、いざ昇降機で下へ……と思ったのだが、反対側からやってきた人影に、慌てて結界魔導器の陰に隠れた。並んで歩く二人は昇降機へ向かっている。片方は、趣味の悪い配色の鎧に身を包んだ男、カロル曰く気持ち悪い喋り方をする騎士団隊長キュモールだ。 「おお、マイロード。コゴール砂漠にゴーしなくて、本当にダイジョウブですか?」 そしてもう一方は、掻き上げた短髪に長く垂らした前髪が印象的な、とても独特な口調の男。こちらは少なくとも騎士ではないようだ。ユーリの脇から様子を窺っていたアカが、げ、と呟いた。 「イエガー、あいつなんでこんなとこに…」 「知り合いか?」 「あー、まぁね…」 妙に濃ゆい二人の会話を盗み聞きしてみることにする。なんだか話し方が独特すぎて些かイライラしてきそうだが。 「ふん、アレクセイの命令になんて耳を貸す必要はないね。僕はこの金と武器を使って、すべてを手に入れるのだから」 「そのときがきたら、ミーが率いる『海凶の爪(リヴァイアサンのツメ)』の仕事、誉めてほしいですよ」 「ああ、わかっているよ、イエガー」 「ミーが売ったウェポン使って、ユニオンにアタックね!」 どうやら、あのイエガーという男がキュモールに兵装魔導器を売った張本人らしい。キュモールと『海凶の爪』とやらが、ダングレスト襲撃を企んでいるといったところか。 「ふん、ユニオンなんて僕の眼中にはないな」 「ドンを侮ってはノンノン、彼はワンダホーなナイスガイ。それをリメンバーですヨ〜」 「おや、ドンを尊敬しているような口ぶりだね」 「尊敬はしていマース。バット、『海凶の爪』の仕事は別デスヨ」 「ふふっ……僕は君のそういうところが好きさ。でも心配ない、僕は騎士団長になる男だよ?」 ……なんか耳が痛くなってきた。ところどころ何を言っているかわからない部分もあるし、あれと会話が成立しているキュモールに感心したくなる。尊敬はしないが。 「ユニオン監視しろって、アレクセイもバカだよね。そのくせ友好協定だって?」 その時、イエガーが微かに首を動かし、肩越しにこちらを見た。その目は確かに、ユーリたちが隠れる魔導器へと向けられている。 「僕ならユニオンなんてさっさと潰しちゃうよ。君たちから買った武器で!」 そして彼らを乗せた昇降機は、労働者キャンプへと下りていった。上機嫌そうな二人の声が遠ざかっていく。それを確認して、ユーリらは魔導器の陰から歩み出た。 「あのトロロヘアー、こっちを見て笑ったわよ」 「明らかにオレたちのこと、気付いてたな」 リタの顔が不機嫌に歪む。 あたしたちをバカにして! ×
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