11 リタ曰く、労働者キャンプに運び込まれたという魔導器は兵装(ホブロー)魔導器だったそうだ。それらをかき集めている様は戦争でも仕掛けようとしているふうだったという。まさかダングレストを攻めるつもりなのか。顔を青くしたカロル。友好協定が結ばれるのに何故、と言うエステルに、リタは続けた。 「この街はね、貴族になれるって触れ込みで労働力を確保してるのよ」 街の完成のために働けば、貴族としてこの街に住める。どうやらこの街の現執政官代理が、そういった触れ込みを他の街に出して人を集めているらしいのだ。 「その執政官、キュモールって騎士なんだって」 「キュモールだと?」 その名に、ユーリの顔が険しくなる。 「ユーリの知ってる人?」 「お前らも一度会ってるだろ。カルボクラムで」 「……ああ、あのちょっと気持ち悪い喋り方する人だね」 カロルにとって奴はその程度の認識なのか。しかしユーリはツッコむ気がない。 「ダングレストを攻撃……ね。キュモールの奴が考えそうなことだ。きっとギルドとの約束なんて、屁とも思ってないぜ」 しかもエステルが言うに、貴族になれるという話も嘘のようだ。貴族の位は、帝国に対する功績を挙げ、皇帝の信認を得ることの出来た者に与えられる。だが現在皇帝はいないのだ、その話が本当だとは到底思えない。 とりあえず労働者キャンプに侵入して、無理矢理働かされている人々を助け出すことにした……は、いいのだが。 「どうやって通ります?」 キャンプに下りるための昇降機。その前には相変わらず見張りの騎士がおり、部外者である自分たちを通してもらうことは到底無理そうだった。 ユーリ、ジュディス、リタは強行突破が単純で効果的だと言うが、カロルはあくまで慎重に、を主張する。まだ出来たばかりの小さなギルドでは、騎士団に睨まれたら簡単に潰されてしまう、とのことだ。 「ようは見張りを連れ出せればいいんだよ」 「どうやってです?」 「……色仕掛け、とか?」 その提案には、さすがのユーリも目を瞬いた。まさか、カロルの口からそんな言葉が出ようとは。 そこからは戦争だった。 まずはユーリの言葉で闘争心だか自尊心だかに火を点けられたエステル。色気が出るような衣装をわざわざ店で仕立ててもらい、セクシー衣装で(こんな姿、フレンに見せたら斬られそうだ。ユーリが)見張りに話しかけてみるが、成果は出ず。 落ち込むエステルを尻目にジュディスが、セクシーというか色々アウトな衣装で騎士に近付くが、彼はだいぶ動揺はしたものの持ち場を離れることはなかった。なんて真面目な。 そして言い出しっぺのカロルは半ば無理矢理女装をさせられ、果てはこのイベントの衣装称号が無い筈のリタまで参加させられたというのに、結局昇降機の前には見張りが立ったままの状態である。 「何なのよ、あの騎士…!」 「うまくいきませんね…」 「うう、ボク、こんな格好までしたのに…」 「残念ね。せっかく穏便に済ませようというのに」 衣装そのままで落ち込んだり困ったり怒ったりしている面々の中で(ジュディスの笑顔がすごく怖い。よほど悔しいらしい)、ユーリは「次、動物の癒しに賭けてラピード行かせてみっか」などと呟いている。自分に矛先が向く可能性なんか、ありすぎて現実なんか見たくない。これはもう、初めから強行突破していたほうが良かったんじゃないかとさえ思えてきた。 その時。 「何やってんの?」 振り返れば、やつはいた ×
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