08 翌朝、これからどうするのかというカロルの問いに、エステルはダングレストに襲来したあの魔物を探すつもりだと答えた。命を狙われた理由、『世界の毒』という言葉の意味を知りたいのだろう。 「でも……見つかる?どこにいるかわからない化け物なんて」 「化け物情報はカロル先生の担当だろ?」 「化け物ではなくて、あの子はフェロー」 口を挟んだのはジュディスだった。一斉に振り返った彼らの中で、エステルが真剣な眼差しになる。 「知っているんです?」 「前に友達と旅をしていた時に見たの。友達が彼の名前を知っていたわ」 「見たってどこでですか?」 「デズエール大陸にあるコゴール砂漠でよ」 げ、とカロルが顔を歪める。その横でユーリが眉を顰めた。砂漠。ただ見たというだけでほいほい行くような場所ではない。 デズエールといえば、このトルビキアの南西にある大陸である。トリム港から船で、内輪の海を縦断して漸く大陸の端に着く。砂漠へ向かうには更に北西へ向かう必要があるのだが。 「それで……エステルはそこへ一人で行くつもりなの?」 「え?あの……」 恐る恐るといった様子のカロルの確認に、エステルの言葉が途切れた。少なくとも否定ではない。それに苦笑したのはユーリだ。 「こりゃ護衛役続けとかねぇと、マジで一人で行っちまいそうだな。なあ、これ、ギルドの初仕事にしようぜ」 「え?……そっか、うん!ここでエステルを一人で行かせたりしたら、ギルドの掟に反するよね」 しかし一つ問題が。カロルは腕を組み、少し困ったような顔になる。 「でも、仕事にするならエステルから報酬をもらわないと」 「別にいいだろ、金なんて」 「ダメダメ。ギルドの運営にお金は大切なんだから」 今は持ち合わせがない、と俯くエステルに助け船を出したのはジュディスだ。報酬は後で考えればいいだろうという提案にエステルは頷く。 「報酬、必ず払います。だから、一緒に行ってください」 「決まりだな」 ユーリの笑み、カロルの同意に、エステルの表情が明るくなる。また皆と共に旅が出来るのだ。目的より何より、それがただ嬉しかった。 「よーし!じゃあ『勇気凛々胸いっぱい団』出発!」 だが、カロルがそう言って腕を振り上げた時には、その場の空気が固まったような気がした。 「ちょっ、それ何です?」 「何ってギルド名だよ」 「それじゃダメです!名乗りをあげる時に、ずばっと言いやすくしないと!」 ギルドのメンバーでもないエステルが何故か物凄い剣幕でカロルに言う。じゃあどうしよう、とユーリを見るが彼は肩を竦めるだけだ。 「……『凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)』なんてどうです?夜空にあって、最も強い光を放つ星」 「一番の星か……かっこいいね」 「『凛々の明星』……ね。気に入った、それにしようぜ」 「大決定!それじゃ改めて出発!」 ギルド『凛々の明星』結成の瞬間 ×
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