07 「そういえば、アカに挨拶し損ねちゃったね」 ダングレストを離れて暫く、休憩を訴えた少年の言葉で足を止めた街道。人目につきにくい辺りまで移動し、火おこしの準備をしながらカロルが言うと、そういえばとユーリが頷いた。 「ま、あいつのことだし、そのうちまたどっかで会うんじゃねぇの?」 あのおっさんではないが、わりと神出鬼没な彼女のことだ。またとんでもないところで会っても不思議ではない。むしろ前触れも断りもなく自然にパーティーインしていても驚きはーーするかもしれない、さすがに。 「ひと休みしたら、ギルドのことも色々ちゃんと決めようね」 「ひと休みしたいのはカロル先生だけどな」 「ギルドを作って何をするの?あなたたち」 ジュディスの問いに、え、とカロルが漏らし、その横でユーリが軽く首を傾げる。フレンにはああ言ったものの、具体的には何も決めていなかった。すると、カロルが少し躊躇いがちに口を開く。 「ボクはまずギルドを大きくしたいな。それでドンのあとを継いで、ダングレストを守るんだ」 それが街を守り続けるドンへの恩返しになると思うから。少年らしい夢だ。立派な夢ですね、と感心したように微笑むエステルに続き、ユーリがふむと頷いた。 「オレはまあ、首領(ボス)についてくぜ」 「え?ボ、首領って、ボクが?」 「ああ。お前が言い出しっぺなんだからな」 「そ、そうだよね。じゃあ、何からしよっか?」 「とりあえず落ち着け」 「うん!」 これではどちらが首領なんだか。ユーリが苦笑すると、ジュディスがクスクスと笑う。 「ふふ、なんだかギルドって楽しそうね」 「ジュディスもギルドに入ってはどうです?」 「あら、いいのかしら。ご一緒させてもらっても」 ジュディスが試すような目でカロルとユーリを見ると、カロルは真剣な顔になり、口を開いた。自分に言い聞かせるような口調で、ジュディスを、それからユーリを見る。 「ギルドは掟を守ることが一番大事なんだ」 その掟を破れば、厳しい処罰を受けることになる。たとえそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りであり、それゆえに掟に誓いを立てずには加入出来ないのだ。 「カロルのギルドの掟は何なんです?」 エステルの問いかけに、言葉に詰まった。何しろユーリから返答をもらったのがつい先程だったため、まだそこまで考えていなかったのだ。 「お互いに助け合う。ギルドのことを考えて行動するーー」 「え……」 「人として正しい行動をする。それに背けばお仕置きだな」 そう言ったのはユーリだった。ぽかんと彼を見るカロルは何も返せず、かわりにエステルが口を開く。 「一人はギルドのために、ギルドは一人のために。義をもって事を成せ、不義には罰を。…ってことですね」 「ああ。掟に反しない限りは、個々の意思を尊重する」 「ユーリ、それ…」 「ってところでどうだ?首領」 一人はギルドのため、ギルドは一人のため。その言葉を何度か繰り返してから、上げられたカロルの顔には笑みが浮かんでいた。 「うん、そう!それがボクたちの掟!」 「今からは私の掟でもあるということね」 気に入ったわ、と告げるジュディスも何やら楽しそうで、ユーリはまた苦笑する。 「掟を守る誓いを立てるわ」 私と、あなたたちのために ×
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