赤星は廻る | ナノ



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アカの計算では、ここでの戦力はユーリ、エステル、カロル、リタ、ラピード、レイヴン、そしてアカ自身の七名だけだった。しかし実際に乗り込んでみれば、そこにジュディスとフレンが加わって、かなりの大所帯になっている。

「少しでも戦力にと思って連れて来たが、あんたいらなかったね。帰っていいよ、レイヴン」

「ここまで来てそりゃないわよ」

歯車の楼閣ガスファロスト、最上階まであと少しといったところでの戦闘中の会話だった。

魔術使いの女が詠唱を始めればユーリが蒼破刃を放ってそれを中断させ、ラピードが追撃に走る。ゴーレムの振るう腕を足場に飛んだジュディスは、空中でくるくると回転して体勢を変え、手にした槍を機械の腕の付け根に突き立てた。サーベルを振り回す男の攻撃を盾で受け、弾き返されてよろけた男にフレンが斬撃を食らわせ、カロルのハンマーが鳥型の魔物の突進を叩き落とす。その間に詠唱を終えたリタが術名を叫べば、渦巻く猛火が敵を捕らえ焼き尽くした。

「……ヒマだねぇ」

「そ、そうです?」

そんな感じで敵は殲滅されていくため、戦闘班より後方にいるアカは回る歯車の上でルームランナー気分で足を進めて暇を持て余していた。傍らに立つエステルはいつでも治癒術を使えるよう身構えている。その向こうにはレイヴンがおり、こちらは折り畳み式の弓を左手にしつつも自分の仕事を見つけられないでいる。要するに、前線の若者たちが元気過ぎて暇なのだ。
それはそれで年寄りには楽だから、とレイヴンは特に文句を言うこともないが、アカは違う。と言うのも、フレンが前線に配置された時、自分が離れている間はエステルの護衛を頼むと物凄い形相で迫ってきたのが原因である。危険な場所に連れて行くことを了承した以上は、その身を守ることを必要以上に考えねばならないのは当然だろう。エステルはそういった立場の人間なのだから。

「…しかし、あの二人…」

これまでの戦いを見て思ったが、フレンとジュディスはユーリと同じ性質を持っているようだ。戦いを好む…リタ曰く『戦闘狂』か。

「そうですね…目がいきいきしてます」

「若人は元気ねー」

「はは、またリタあたりに呆れられちまいそうだね」

楽しげに笑ったアカは歯車の上から降り、戦闘を終えた仲間たちの元へと歩いていく。エステルとレイヴンもそれに続いた。

「さ、ユーリかフレンにかわってもらうかねー。うちも暴れたいし」

「お前さんも青年たちのこと言えないと思うわよ」





アカも立派な戦闘狂



SKIT
彼女の理由





 


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