47 無事に店への侵入に成功したアカたちは、誰もいない店内にいくらか安堵しつつ、上のフロアへの階段を上がった。ギルドメンバーに見つからぬよう慎重に最上階まで進めば、一つのフロアをぶち抜かれて出来た首領の私室で、バルコニーに置かれた席に座るバルボスを見つけた。部屋の隅に立つラゴウの姿も確認する。また悪巧みでもしていたのか。 「悪党が揃って特等席を独占か?いいご身分だな」 「そのとっておきの舞台を邪魔するバカはどこのどいつだ?」 バルコニーから外をーー騎士団とユニオンが睨み合う様を眺めていたバルボスが、階段のそばに立つユーリたちへと振り返る。 「ほう、船で会った小僧どもか。……テメェも来たか、アカ」 「ああ。あんたのおかげでいい迷惑さ。造反なんかしてくれやがって、面倒くさいったらないよ」 「そう思うならうちのギルドに来ればいい。歓迎してやるぞ」 「はっ、毎度言ってるだろう。あんたのギルドなんか死んでも嫌だ」 バルボスとアカが言葉を交わしている間にも、バルボスの合図を受けた『紅の絆傭兵団』のメンバーが彼女らを囲む。アカとユーリ、エステルは剣を抜き、カロルは斧を握り、リタは帯を解き、ラピードも短剣をくわえ戦闘体勢をとった。 その時、遠くから爆音が響いた。睨み合っていた騎士団とユニオンの大軍が、戦争を始めるべく動いたのだ。バカめ、とバルボスの顔が笑みに歪む。 「これで、邪魔なドンも騎士団もぼろぼろに成り果てるぞ!」 「まさか、ユニオンを壊して、ドンを消すために…!」 「騎士団がぼろぼろになったら、誰が帝国を守るんです?ラゴウ、どうして…」 エステルはラゴウに問うが、返答の前に答えがわかってしまった。ラゴウが与する評議会は騎士団と敵対関係にある。騎士団の弱体化に乗じて、評議会が帝国を支配するというカラクリなのだ。 「騎士団とユニオンの共倒れ…フレンの言っていた通りってことか」 「ふっ、今さら知ってどうなる?どうあがいたところで、この戦いは止まらない!」 それはどうかな、とユーリの顔に笑みが浮かぶ。その時、地を駆ける馬の足音が彼らの耳に届いた。 「ったくーー」 遅刻だぜ、フレン ×
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