41 ユーリの剣は、本当に騎士団で学んだのかと疑いたくなるほど変則的だ。騎士たちの振るうそれと違って読みづらい軌道は、一見でたらめに見えるがその実正確にこちらの嫌がる場所を攻めてくる。攻撃の合間に剣をくるりと回す動作にも無駄はなく、それどころか次の動きへの繋ぎになっているものだから驚きだ。 身のこなしはかなりのもの、瞬時の判断は文句無しに素早く正確で、技のキレの鋭さには拍手を送りたくなる。共に並んで戦う仲間としては非常に心強いが、敵に回すと最も性質の悪い相手の一人と言えるだろう。 アカの剣は、ユーリほど軌道が読みにくいということはないのだが、何しろ動きが速い。二本の剣をまるで自身の手足のように振るう姿からは数えきれないほどの経験が感じられ、文句を言いながらも楽しげな色を帯びた眼差しは余裕に満ちている。最低限の動きのみで自身への攻撃を捌き、かつ反撃を繰り出す様は普段のやる気の無さそうな態度からは窺えないだろう。 腕力は決して強くはないが、それを補う鍛えられた技術、勘の良さ、天性のものと言うべき戦闘センス。後者二つはユーリも持つものだからこそ、勝負の行方がわからない。純粋な力比べならユーリ、経験で言えばアカが勝るのだが。 「…っと」 甲高い音と共に、弾かれた剣が宙を舞う。離れた地面に突き刺さったそれを目で追ったのは、持ち主であるアカだ。 「さっすが。やるねぇ、ユーリくん」 笑みを浮かべて剣先を向けてくる青年にニヤリと笑って告げ、右手側のみとなった武器を下ろす。自身の敗けを宣言しているのだ。ユーリの反応を待たないまま、彼女はドンへと振り返った。 「まだ足りないかい?」 「いいや、十分だ。手間ぁかけたな」 「んなこと言うくらいなら、はじめっからうちにやらせんなっての」 ドンの返答を聞いて、漸くユーリも戦闘体勢を解く。足元へ歩み寄ってきたラピードから鞘を受け取り刃を収めると、二人の手合わせを見守っているだけだったカロルらが駆け寄ってきた。 ユーリは彼らの声に適当に返すと、飛ばされた剣を拾いに向かったアカの背に目を向ける。視線に気付いた彼女は振り返り、探るような目をしたユーリに苦笑した。 「……おっさん。今のって、あいつの本気だったか?」 そのままドンの元へと歩いていってしまったアカを指して、またいつの間にか戻ってきていたレイヴンに問う。彼は目を丸くし、カロルやエステルたちは首を傾げた。 「んー?別段手を抜いてたって感じではなかったけど」 「……そっか」 「どうしたの、ユーリ?」 「いや……」 正直、拍子抜けだった ×
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