39 「まさか、あの力が『リゾマータの公式』…?」 デュークが去ってから、リタはずっと考え込んでいる。世界に点在するエアルの源泉、エアルクレーネ。この森にあるものだけを調べても確証は得られないだろうから他の場所にあるものも調査しなければ、と彼女は言っていたが、今その頭を占めているのはそれとは別のことなのだろう。 「あれ?」 「おや」 森の中ほどまで戻った時、ひらけた場所にたくさんの人影があるのが見えた。その中に大柄な老人を見つけて、目をカロルは輝かせ、アカは丸くした。 「ドンだ!」 そうか、ドン・ホワイトホースとその部下が向かった魔物の巣というのはここのことだったのか。ユーリたちがそちらに歩いていくと、彼らに気付いたドンが顔を上げた。 「アカじゃねぇか」 「や、お疲れみたいだね」 「はん、ちぃとばかし休んでただけだ」 「え、アカってドンと知り合いなの!?」 彼らが会話を交わしているのを見て、カロルの顔が驚きに満ちる。アカがダングレストで有名なのは知っていたが、まさかドンと親しいとは思わなかったのだろう。アカが苦笑で肯定した。 「暫く見なかったが、元気にやってるみてぇだな」 「おうさ。うちはいつも元気だよ」 「はっ、カルボクラムで死にかけてた奴が何言ってやがる」 そのドンの言葉には、カロルだけでなくユーリとエステル、リタも目を見開いた。そしてアカへと集まる視線。彼女は迷惑そうに顔を歪める。 「何年も前の話をいつまでも引きずんなってのに…」 「アカ……」 名を呼ぶ声が聞こえたのでそちらへ目を向ければ、酷く不安そうな顔をしたカロルの姿があった。その隣に立つエステルも似たような顔でこちらを見つめている。困った。笑って誤魔化せる状況じゃない。 「なんでそんな顔するかねぇ…今はピンピンして君らの前に立ってるだろうに」 「で、でも死にかけたって…」 「だからなんで今も死にかけてるみたいな顔で見るんだい」 泣きそうな顔になってきたカロルを宥めながら、アカはドンに細めた目を向けた。余計なことを言いやがって。睨むような視線をものともせず、ドンは抱いていた疑問を口にした。 「アカ、てめぇらが何かやったのか?」 「何かって?」 問いに、アカ同様ユーリらも首を傾げた。話を聞けば、ドンたちはつい先程まで魔物と闘っていたのだが、暴れていた魔物が急に大人しくなって退いていったらしい。 エアルの暴走がおさまったからだろうと気付いてそう話したが、森の奥での出来事は語らなかった。デュークのことは話しても仕方なさそうだし、ドンも追求してこなかった。 「あ?」 不意にドンの目が彼らから逸れ、離れた木の陰へと向けられた。 「なに隠れてやがる」 そこにいたのはおっさんでした ×
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