37 「ねぇ」 森の奥に進む途中、アカがあるものを見つけて声を上げた。宝箱でも落ちてたかと振り返ったユーリに、冷静な表情を変えずに続ける。 「パティっぽいのが魔物に捕まってるんだが」 「そういうことはもっと慌てて言いなさいよ!」 怒鳴りながら振り返ったリタの視線の先で、カブトムシのような魔物が獲物をぶら下げて飛んでいる。後に餌にされるのは確実だという状況にあるその人物ーーパティは、暢気に空中遊泳を楽しんでいるようだ。そうか、馬鹿か。 「助けなきゃ!」 「あーはいはい、俺様にお任せよっと」 慌てるカロルの言葉を受けて、レイヴンが弓を構えた。特に気負う様子もなく放たれた矢は見事魔物に命中し、解放されたパティが宙を舞う。それを予測して走ったユーリが、執政官邸前でのあの時のように無事に少女を受け止め、 「ナイスキャッチなのじゃ!」 その笑顔を確認するや否や、地面に落とした。 「女の子に対して随分乱暴なんだねぇ」 「こんな場所に一人で来るようなやつなら、あの程度乱暴とは言わねぇだろ」 「はは、確かに」 パティはやはりお宝を探してここまで来たらしい。なんでこんな森の中に宝があると思ったのかと問えば、彼女は測量ギルド『天地の窖(あなぐら)』からの情報だと答えた。 「連中は世界を回っとるからの」 「なーるほど。確かにあそこの情報なら、少しは信用出来るかもねぇ」 ということは、パティがラゴウの屋敷にいたのも、そのギルドからの情報を受けてだったのか。あそこには宝はなかったようだし、この森にもあるようには思えないのだが、騙されたということはないのか。 「100パーセント確実だという話のほうが胡散臭いのじゃ」 「おっ、いいこと言うじゃないの!」 「あんたは100パーセント胡散臭いわよね」 リタの一言にレイヴンがひどい!と声を上げるが、他の全員に納得されれば反論も出来まい。 パティはまだ宝探しを続けるらしく、エステルらの心配に大丈夫だと返して、その姿は木々の向こうに消えていった。 こちらもこちらでさっさと目的を達成してしまおう、と更に奥深くに足を向けた一行は、森の最奥らしき場所で大木の根元が異様な光を発しているのを見つけた。遠目でもわかる。エアルの暴走だ。 その直後、背後に現れたギガラルヴァーー蠍のような巨大な魔物の姿に、ユーリらの顔に緊張が走る。ダングレストを襲ったものたちと同様凶暴化しているようだ。 (こいつは…) ギガラルヴァの性質を知るアカは、双剣を構えながら後退る。その脇を駆け抜けたラピードと共に、ユーリが剣を抜き魔物へと向かっていった。 ……退くか、或いは、 ×
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