36 結界が蘇ったことにより、街の中の魔物が今以上に増えることはなくなった。遠くない終わりが見えたのだし、後はギルド員たちに任せても大丈夫だろう。 結界の外の魔物を一掃する、と言って騎士を率いていったフレンを見送って、ユーリらはバルボスの情報を求めてユニオン本部に向かった。 しかしタイミング悪く、ドンは部下を連れて魔物の巣に向かったらしい。本部前に立っていた男からその話を聞くと、ならばその間に仕事を済ませようとリタがケーブ・モック大森林に向かうと言い出した。そうすると、エステルもそちらに向かうことになり、更には騎士団長直々に姫君の護衛を任されたユーリも以下略。 エステルは二人で大丈夫だと言ったが、彼女に何かあれば自分がフレンに殺されるのだと、結局ユーリも同行することになった。カロルとアカも言わずもがな。 そしてやって来たケーブ・モック大森林は、騎士団長の言っていた通り、木々が異常な成長を見せているジャングルのような場所だった。植物が育ちすぎると逆に不健康に見えるなんて、初めて知った。 「で、なんであんたがここにいるんだい?」 そして森の入り口で再会を果たした紫羽織の男に、アカが溜め息混じりに言った。 「んー?自然観察と森林浴って感じかな」 「……胡散臭い」 カプワ・ノール、トリムに続いてまたもユーリらの前に現れたレイヴンは、なんと彼らに同行したいと言い出したのだ。当然何らかの目的があるのだろう、と疑ってかかるが、胡散臭すぎる男はのらりくらりとかわしてまともに返さない。 「背後には気をつけてねー。変なマネしたら殺すから」 リタが言う。出会い頭にファイアボールを放たなかっただけ表彰ものだ。 「なあ、俺ってばそんなに胡散臭い?」 「ああ。胡散臭さが全身から滲み出てるな」 「どれどれ……」 「ついて来るのは構わないが、余計なことしたらオレ、何するかわかんないんで。そこんとこはよろしくな」 これはユーリ。彼はそれだけ言うと仲間たちの先頭に立ち、森の奥へと進んでいく。軽い口調ではあったが、この中年が妙な動きをすれば、拳のひとつは確実に飛んでくるだろう。 「ま、そういうことさ。大人しくしとくのが身のためさね」 そしてアカだ。仲間たちが歩き出す中、足を止めたままレイヴンに言う。彼は大袈裟に肩を落とした。 「アカまでそんなこと言うなんて…俺様って信用無いのね」 対してアカは短く笑い声を上げる。そして足を踏み出しながら、男へと振り返った。 「うちがあんたを信用してるかどうかなんて、あんたはとっくに知ってるだろう?」 前を行く仲間たちを追った彼女の背を暫く見つめて、レイヴンはそうだなとだけ呟いた。 今更、確認するまでもない SKIT ┗一発撃破! ×
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