赤星は廻る | ナノ



27

 



新興都市ヘリオードは、トルビキア大陸の中央部に位置する、まだ出来て間もない街だ。帝国の指揮下でなおも建設が進められているここには、騎士の詰所も置かれている。その一室で取り調べを受け始めて、どれくらいの時間が立っただろうか。読み上げられる何番目かの罪状を聞きながら、ユーリはつまらなそうに視線を窓の外に向けた。
18番目の罪状の確認が終わった時だ。ふいに部屋の扉が開いたかと思えば、二人の人物が入ってきた。彼らの姿を確認したルブランたちは、慌てた様子で敬礼をする。ユーリもまた、驚きに目を見開いた。

尖った耳に長い触手(後頭部から伸びる、彼ら特有の感覚器だ)、青い髪をポニーテールにしたクリティア族の美女。その女性を従えているのは赤を基調とした鎧に身を包んだ、灰色の髪をした男。威厳のある風体で立つ彼は、騎士団長であるアレクセイ・ディノイアだ。何故騎士団長ともあろう者がこんなところに。疑問に思う彼らに構わず、アレクセイはユーリに言った。

「ヨーデル様の救出、並びにエステリーゼ様の護衛、騎士団として礼を言う」

彼が言うには、エステルとヨーデルの計らいによって、ユーリの罪は全て赦免されたらしい。ルブランとデコボコは納得いかないといった顔をしていたが、既に決定されたことだと知れば黙るしかない。
クリティア族の女が前に出て、手にした小袋を差し出した。おそらく中身は金だろう。しかしユーリはそれを見るなり、彼らから視線を外してしまう。その顔はやや不機嫌そうだ。

「そんなもんいらねぇよ。騎士団のためにやったわけじゃねぇ」

「そうか」

「それより、エステルだが…」

「先程、帝都に戻る旨をご了承いただいた」

その言葉にカロルが驚きの声を上げるが、すぐに納得して俯いた。エステルは皇族、それも次期皇帝候補である。本来は今までのように騎士の護衛も無く出歩いていたこと自体が許されないことなのだ。

「姫様には宿屋でお待ちいただいている。顔を見せてあげてほしい」

それだけ言って、アレクセイは部屋を出ていった。その後、ルブランたちの複雑そうな顔に見送られるようにしてユーリたちも外に出る。このままでいいのか、とリタに問われたが、選ぶのはエステルだ。ユーリが口を出すことではない。
とりあえず、暫し自由行動にしよう。そう言ってひとまず宿屋に向かうことにしたユーリは、街の中心に置かれた巨大な結界魔導器の前に見慣れた人物を見つけて、目を丸くした。が、その人がこちらを向くと同時に微笑んだのを見て、歩みを再開させながら苦笑する。

「用事は終わったのか?」

「まあね。10000ガルドの賞金首が捕まったって聞いて見に来たんだが、もう手配は取り下げられたんだって?」

「残念そうな顔すんなっての」





再びの赤色がそこに





 


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