20 爆弾でも仕掛けてあったのだろうか、激しい爆音が鳴り響く度に船が大きく揺れる。 ラゴウとバルボスを乗せた小船はもう見えない。ユーリとの死闘後、彼を完全に気に入ってしまったザギは先ほど爆発に巻き込まれて高笑いしながら海へと落ちた。アカたちを囲んでいた傭兵も慌てて脱出艇で逃げ出していったので、沈みかけた船に残っているのはユーリたちのみ、と。 「海に逃げろ!」 青年の言葉に仲間たちはすぐ行動に出ようとしたが、漂う煙に咳き込む声が聞こえてぎょっとした。少年のような声は、先程バルボスが出てきた扉の向こうから聞こえてくる。誰かいるのか。ユーリが迷わず駆け出した。 「ユーリ!」 「エステリーゼだめ!」 カロル、リタ、エステルが海に飛び込むのを確認してからアカが甲板を蹴る。弾けるような音の中、水面が肌を打つ感覚に身震いし、浮き上がると同時にぶるぶると頭を振る。 船は煙を上げながら、呆気なく沈んだ。 ユーリは、と周囲を見回すエステルに返る声は無い。鞄を浮き袋がわりにするカロルも、リタも、水が苦手らしいラピードを抱えるアカも、何も言わない。 沈黙が落ちるその中央に、黒い影が浮上した。 「ユーリ!」 結構飲んじまった、と暢気な口調で言って、たった今水面から顔を出したばかりの青年が咳き込む。一同の顔が安堵に綻ぶが、彼が抱えている人物を見つけてリタとカロルが首を傾げ、エステルとアカは目を見張った。 誰よそいつ、とのリタの問いに、さあ、とユーリも頭を傾ける。気を失っている金髪の少年は身なりの良い、見たところ貴族以上の人間であるようなので、彼の知り合いでないことは確かなようだ。 「ヨーデル!?」 「知ってるの?」 驚いた顔で声を上げたエステルに全員が注目する。と、彼女ははっとしたように口に手を当て、誤魔化すように笑った。 問い詰めようとリタが口を開くが、それは新たな声に遮られてしまう。現れた影にそちらへと目を向けると、フレンを乗せた船がすぐそこまで来ていた。 「ヨーデル様!?」 ユーリの腕の中で頭を垂らした少年を見つけて、彼もエステルと同じように驚いた顔をする。それを見やったアカが、ヨーデルと呼ばれた少年とエステルの間を視線を往復させ、やっぱりねと呟いた。 ……そろそろ潮時かね ×
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