赤星は廻る | ナノ



19

 



フレンはすぐに現れた。しかし魔導器の調査をする前に、窓を破って入ってきた竜の姿に全員が動きを止める。エフミドの丘で聞いた『竜使い』か。
その背に乗った人物が握った槍で魔導器の魔核を破壊した瞬間、ああ!とリタが悲鳴じみた声を上げた。彼女とウィチルが魔術を発動させるが、竜は宙を舞うようにして飛び交う炎の玉を避けていく。

船を用意しろ、と叫んだラゴウの姿を見つけて、ユーリたちは彼の後を追って船着き場に向かった。
パティは街のほうへ帰らせたから、あとはラゴウを捕まえるだけ。飛び乗った船で傭兵ギルド『紅の絆傭兵団』の人間を蹴散らすと、部屋の中から巨体が姿を現した。

「隻眼の大男……あんたか。人使って魔核盗ませてるのは」

右手に大剣を持ち、左手は不思議な形をした金属製の義手。顔の右に大きな傷を負った、がたいの良い厳つい男。どうやらこの男が、シャイコス遺跡でコソ泥から聞き出した『黒幕』らしい。
彼はユーリたちを一瞥し、こんなガキ共から逃げているのかとラゴウを鼻で笑ったが、青年たちの後方に立つ人物を見つけて微かに目を見開いた。

「アカじゃねぇか」

「あんたが黒幕だったとはねぇ。帝国と組むなんてどういうつもりだい、バルボス」

「はっ、てめぇこそワシの誘いを何度も蹴っておいて、こんなガキ共と遊んでやがったのか」

「おや。あんたにとっちゃ、うちもガキと変わらんだろう?」

言葉を交わしながら剣を構えたアカに倣い、リタやカロルも戦闘体勢をとる。
しかし相手は船に取り付けられた脱出艇にラゴウと共に乗り込むと、すぐに海の上へと逃げ出した。ユーリたちもそれを追おうとしたが、ラゴウに名を呼ばれ彼らの前に姿を現した男によって阻まれてしまう。

「誰を殺らせてくれるんだ?」

奇抜な服装をした、奇抜な頭の男(赤と金と黒の三色頭だ。奇抜と言うほかない)。ユーリとエステルが目を見張った。彼は、城を後にする時、ユーリをフレンと間違えて襲いかかってきた暗殺者だった。

「うわ、ありゃザギじゃないの」

「なんだ、アカの知り合いか」

「冗談。こっちからちょっと知ってるってだけさね」

楽しそうに笑った男は、両手の円月刀を構えてユーリに飛びかかる。援護に走ろうとしたカロルやエステルを、アカが止めた。周囲にはまだ傭兵が残っている。ザギの相手は実力的にユーリぐらいにしか出来そうにないし、今は彼らに邪魔が入らないよう残った傭兵の相手をするべきだ。
剣を握り、技を繰り出しては敵を薙ぎ倒す。詠唱するリタやエステルの壁になり、前衛を走るカロルやラピードのフォローをし、確実に相手の数を減らすが、

「!!」

爆音と共に、船が揺れた。





ちょっと待って、まさか





 


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