16 リタたちと合流して宿屋に入ると、ちょうどフレンとエステルが話を終えたところのようだった。 まずは彼女を守ってくれてありがとう、とフレンから礼を言われ、次はユーリの違法行為を問題点に挙げられる。脱獄、公務の妨害、不法侵入。どれも確かにやったことだ、今更しらを切る気は無い。手配書の取り下げは申し開きをするが、相応の処罰を受けてもらう。フレンの言葉に、ユーリはこれといって反論しなかった。 「別に構わねーけど、ちょっと待ってくんない?」 「下町の魔核を取り戻すのが先、と言いたいのだろう?」 さすが、わかってる。口には出さなかったが、彼に頷きを返したフレンは部下に報告を促した。 橙色の髪をした女性騎士、ソディアと、ローブを着た小柄な少年魔導士、ウィチル。彼らが、今フレンに従い行動を共にする部下たちだ(ウィチルはアスピオの魔導士で、協力を仰いだだけであって騎士団員ではないらしいが)。 彼らは当たり前ながら任務で来ていたらしく、この街の執政官、ラゴウが天候を操る魔導器を持っていることも知っていた。その証拠を掴みラゴウを法で裁くことが目的のようだが、なかなか思うようにいかないらしい。魔導器研究所の強制調査権限を提示しても、ラゴウにはあっさりと拒否された。自信があるのなら正面から乗り込んでこいと安い挑発までされたが、これは罠だとフレンは言う。 調査に踏み込んでも魔導器を隠されてしまえば、見つからなかった時は騎士団の失態以外の何物でもない。騎士団と対立する評議会の人間であるラゴウの狙いはそれなのだ。 「屋敷の中で何か起これば、騎士団の有事特権が優先されて踏み込めるんですけどね」 「ああ……そういやそんなのあったな」 つまり、屋敷にコソ泥でも入り込んで、ボヤ騒ぎでも起こればいいわけだ。ユーリの言葉と表情から彼の意図が読み取れたフレンは、無茶はするなと言うが、それだけだ。 確実に法に反する行動ではあるが、騎士団小隊長の黙認を得たことで、特に気負った様子もなくユーリは部屋を出ていく。仲間たちもそれに続き、宿を後にした彼らは執政官邸に向かった。 「あれ?アカは?」 「なんか買う物があるから先行っててくれって言ってたわよ」 「すぐ来るだろ。それより…」 問題はどうやって忍び込むかだ。セオリーとしては、住人たちが使う通用門から、が有効なのだが。 「残念。外壁に囲まれてて、あそこを通らにゃ入れんのよね」 怪しいおっさん登場 ×
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