11 シャイコス遺跡の地下、その奥深くでリタは足を止めた。どうやらここが目的地らしい。……と言うより。 「うっわ、どデカイのがいるね」 「これも魔導器?」 「ちょっと、不用意に触らないで」 そこには人間などより遥かに大きい石像が佇んでいた。リタが言うには、これは人型魔導器(ゴーレム)らしい。これを調べればどうのこうのと呟いているので、彼女の目的はどうやらこの魔導器だったようだ。 妙な気配を感じて魔導器の上に目を向けると、リタが着ていたものと同じようなローブを身に纏い、フードを深く被った人物がいた。彼はアスピオの魔導士だと名乗ったが、リタに対し何者だと問うたことが仇となり、ユーリたちに怪しい者だと認識されてしまった(なんでもアスピオの人間にリタを知らない者はいないのだそうだ)。 焦った彼は、持っていた魔核を人型魔導器に嵌め込み、ユーリたちを襲うよう命じて逃げていった。 「うちが追う。それの相手よろしくね」 「は!?追うったって……ちょっ、待てアカ!」 手加減など知るわけもなく暴れる魔導器の攻撃を避けながら、元来た道を走り出した。彼は遺跡を出ようとしていたようだったから、出口に着く前に捕らえなければまた面倒なことになる。あの魔導器の相手もなかなか大変そうだが、凄腕の魔導士も一緒なことだし、ユーリたちに任せておけばなんとかなるだろう。 前を走る彼は貧弱そうな雰囲気そのもので体力がそれほど無いらしく、このまま走っていれば大した苦労もなく追い付けそうだ。 「ま、ただ捕まえんのも芸がない、し!」 背負った鞘から抜いた剣を一振りし、衝撃波を放つ。刃のようなそれは男の脇をすり抜け、前方の、上部が欠けた太い柱の根元に当たった。支えを失った柱はぐらりと揺れ、逃げ道を塞ぐようにして土煙を上げながら男の前に横たわる。彼はひぃっと短く悲鳴を上げると、慌てた様子で他の道を探した。 「はいはーい、追いかけっこはここまでですよー」 元来た道を戻ろうにも、そこには双剣を抜いたアカが立ち塞がっており、柱を乗り越えようにも彼女がそれを許してくれる筈もない。それでもまだ往生際悪く逃れようとしていたので、アカは片刃剣の峰で彼の首筋を打った。気を失って揺れた体はそのまま地面に倒れ、それを確認してから剣を鞘に収めて今来たばかりの道を振り返る。色とりどりの四人組と一匹が走ってきたのは、それから少し後のことだった。 さあ、どうしてくれようか ×
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