10 不法侵入者の少年に魔術の制裁を繰り出したのは、この小屋の主であるリタ・モルディオという少女だった。 彼女はユーリに背後から剣を突き付けられても、機嫌を悪くしただけで平然としており、彼の言った魔核泥棒という言葉を否定した。かといってユーリが納得するわけもないのだが。 「……待てよ。そうか、その手があったか……」 青年に鋭い目を向けられながら、リタはぶつぶつと何事かを呟いている。ユーリやアカ、不思議そうに首を捻っているエステルとカロルを一瞥して、ついて来い、とさも当然のことのように言った。 目的地は、アスピオの東に位置するシャイコス遺跡。そこに遺跡荒らしの盗賊団がいるのだと、彼女に協力を仰ぎに来た騎士から聞かされたのだそうだ。 「その騎士ってフレンでしょうか」 「だな。あいつ、フラれたんだ」 特有のローブを脱ぎ、軽装になったリタに半ば強引に連れ出されることになってしまったが、警備員呼ぶ?などと言われたら従わざるを得ない。 「あの、わたしのことはエステルって呼んでください」 「わかったわ、エステリーゼ」 「……ええと……」 なかなか手強い少女だ。前方で繰り広げられているコントに近いものを眺めながら、お子様たちの後ろを歩くユーリは苦笑する。 しかし隣の人物からの視線に気付くと、表情を正してから目を合わせた。 「なんだよ」 「それほど警戒してないんだなーと思ってさ」 魔核泥棒だと疑っているわりには、監視の目が鋭くない。彼女の言いたいことを察して、ユーリは小さい息をついた。 「君さ、リタは違うってわかってんでしょ」 「ああ」 あっさりと返してやると、今度は彼女が目を丸くする。前方の少女らにこちらの声が聞こえていなさそうなのを確認して、続けた。 「こいつが反応しなかったからな」 アカとは反対側、右隣を歩くラピードを示す。 帝都で『モルディオ』を逃がした時は、相手はフードを深く被っており顔を見ることは出来なかった。しかし嗅覚の鋭いラピードは、たとえ顔を見ていなくとも、匂いで相手を識別出来る筈である。そのラピードがリタに対して無反応だったため、ユーリは彼女に疑いを抱くことを早々にやめたのだ。 「ま、あいつが何を企んでるかわからない以上、警戒を怠る気はないけどな」 「そうさね」 何が待ち受けているのやら SKIT ┗詐欺じゃない ×
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