09 裏口らしき扉を見つけたものの、都合良く鍵が開いているわけもなく。仕方ないから塀を乗り越えるかと相談している背後で、手先の器用なカロル少年が見事に鍵を外してみせ、無事に不法侵入を果たすことが出来た。 入った場所は図書館のような建物で、フードを被った人物ばかりが見られる。この街の研究員らしき彼らの中から一人に話しかけ、モルディオのことを聞くと、激しく動揺した後、離れの小屋に住んでいると教えてくれた。 警備の騎士の時もそうだったが、モルディオの名を出した時の相手の反応がどうもおかしい。関わりたくないとあからさまに言っているようで、カロルとエステルは不安になった。 「だ、大丈夫なの?そんな人に会いに行って」 「ならカロル先生は外で待ってろよ」 「言ったろう?モルディオって人物はアスピオの中でも変人視されてるって。あの反応はある意味当然のことなのさ」 「そうは言ってもさぁ……」 「オレは魔核を取り返さにゃなんねぇし、退く気はないぜ」 「……っもう!わかったよ……」 離れに建てられた小屋の前に立ち、ユーリはドアノブを握った。しかし鍵がかかっていることを知ると、扉を少し荒げに叩く。普通はノックを先にするものだが、ユーリらしいと言うか何と言うか、あまり違和感を覚えなくて苦笑した。 ノックをしても声をかけても反応は無く、ではここは自分の出番だろうとカロルが前に立った。勝手に開けちゃだめだ、とエステルが声を上げるが何のその、少年の手によってあっさりと鍵を外された扉を、何食わぬ顔でユーリは開ける。清々しいほど堂々と屋内に足を踏み入れると、ずかずかと奥に進んで行った。 「留守かな?」 「カロル!」 「だったらその間に証拠でも探せばいいんじゃないかね」 「あ、アカ!もう……」 無理矢理鍵を開けてまで不法侵入を果たしたことで、罪悪感で胸がいっぱいなのだろう。そわそわした様子のエステルは、他三人(と一匹)と違って玄関から先に進もうとはしなかった。 「あ、カロル」 魔導器や本、実験器具のような物ばかりが埋めている屋内に、もう一つの気配があることに逸早く気付いたのはアカだった。彼女は少年の名を呼び、その背後を指差す。 「後ろ」 「え?……ぎゃああぁあぁ!!」 カロルが振り返った先には、本の山の中に立つ、フードを深く被った人物の姿があった。少年の悲鳴に、うるさい、と不機嫌な声を溢した人物の足元に、橙色の術式が浮かぶ。 「泥棒は……」 察したユーリがカロルの元を離れ、アカが何食わぬ顔で両耳を塞ぐ。なに、なに、と怯える少年。 「ぶっとべ!!」 「いやあぁあああ!!」 容赦無く魔術が発動し、室内に大きな爆音が響き渡った。 見事なファイアボールですこと ×
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