08 「カロルはどうしてあの街に来てたんです?」 「あ、ボクは魔物狩りギルド『魔狩りの剣(ツルギ)』のエースで、他のメンバーと一緒にハルルに来てたんだけど……」 「え?じゃあ、わたしたちと一緒に来てしまってよかったんですか?」 「いいのいいの!多分置いていかれ……や、後で合流する約束してるから!」 「そうなんです?それなら……」 「うん、エステルたちだけじゃ心細いと思うから、もう少し……」 「……アカ?」 青年に声をかけられて、顔を上げた。と、五歩ほど先に立つ彼と、それより更に三歩向こうにいる仲間たちを見つけ、無意識のうちに歩みの速度を緩めていたことを知る。急ぎ足で彼の隣に並び、仲間たちと同じ速度に調整して足を進める。 「どうした?」 「んー、ちょっと考え事」 「見りゃわかる」 「そう?」 「モルディオか?」 「さっすがユーリくん。素晴らしく察しがいいね」 彼の口にした名を聞き付けてか、前を歩いていた二人(と一匹)が振り返った。集まる視線に、短く息をつく。 「知り合いなのか?」 「違う違う。有名だからね、あの人」 「情報屋の知らない名じゃないってか」 「情報屋、です?」 「エステル。その話はまた後で、な」 本人に会ったことは無い。しかし噂は何度も耳にしている。『モルディオ』は、変人の集まるアスピオの中でさえ、変人と呼ばれる人物だ。 「なら、そいつが魔導器の魔核盗んだって不思議じゃねぇだろ」 「だから違うんだって。変人の中の変人が、そんな小者みたいなことするかねって話」 「……お前が言うと、なんか説得力あるよな」 「そりゃどーも」 かと言って、アカもモルディオ本人に会ったことが無いのは、先も言ったように変えようのない事実だ。相手をその目で見ていない以上、今口にした言葉も憶測でしかない。いずれにせよ、本人を訪ねてみればわかることだ。 「ま、うちの言葉に揺らされる必要は無いよ。実際モルディオが犯人って可能性が無いわけじゃないし」 「ああ。頭の片隅にでも置いとくよ」 そうして辿り着いたのは、洞窟の中の街。学術閉鎖都市アスピオ。太陽に照らされることもなく薄暗い、涼しげな場所だ。 街の入り口に立つ二人の騎士に、ここは帝国の施設だから通行証無しでは通せない、と告げられ、カロルがそれぞれに視線を移す。やはり、そのうちの誰かが持っているなどという都合の良いことは起こりそうになかった。 「アカなら持ってそうなのに……」 「悪いね。アスピオの魔導士にも客はいたんだが、街の中に入ることは無かったんよ」 フレンもここに来ているらしいが、残念ながら詳細は教えてもらえず、モルディオを呼んでもらうことも出来ないようだ。しかしここで諦めるわけにもいかない。他の場所から入れないかと、街の周りを回ってみることにした。 厄介なことにならなきゃいいんだけど ×
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