07 カロルを加えたメンバーでハルルの街に辿り着くと、魔物に襲われたのだろう、至るところに座り込む怪我人を見つけたエステルが真っ直ぐにそこに向かっていった。治癒術を操る彼女なら住人たちの怪我を治すことは可能だろうが、結構な人数がいる。彼女が無茶をしないようにと、パナシーアボトルの合成をカロルとユーリに任せたアカが後を追った。 「聖なる活力、ここに……」 武醒魔導器をつけた左腕をかざし、次々に怪我人に治癒術を施すエステルを、少し離れた位置から眺める。軽傷の者はアカが担当して既に全員診た後なので、今エステルが治した者でひとまず終わりの筈だ。長をはじめ住人たちに礼を言われている彼女をまた暫く眺めていると、ユーリに声をかけられた。 「パナシーアボトルは出来たのかい?」 「ああ。……なあ、気付いたか?」 「ん?……ああ、うん」 エステルに視線を向けた彼の問いの意味に気付いて、頷く。何の話かと食い付くカロルを適当に宥めて、それ以上は何も言わず、エステルを連れて樹の根元へと向かった。 ボトルを手渡されたカロルが嬉々として根元の地面、魔物の毒で変色している箇所に瓶の中身をふりかける。すると樹は淡い光を発した、が。 「そんな……」 「まさか、量が足りなかったの……!?」 何も起きないまま、光は消えてしまった。もう一度パナシーアボトルを作ろうにも、材料となるルルリエの花びらは先のもので最後だった。街の人間たちの顔色が絶望に染まる。このまま樹は枯れてしまうのか。結界は戻らないのか。悲痛そうに樹を見上げたエステルが、胸の前で手を組み、目を伏せた。 「お願い……咲いて」 途端、彼女を眩い光が包む。いや、エステル自身が光を発しているようだ。 その様に驚く間も無く、沈黙していたハルルの樹が光と共に色を取り戻していく。枝の根元から、空へ向かう先端まで。満開に咲いた花を見上げた住民たちが歓声を上げ、ユーリとアカは言葉を失った。 「……なんだこりゃ」 「ははっ……すげぇな、エステルのやつ」 もう、驚きも通り越して笑うしかない。エステルは力を使い果たしたように、地面に座り込んでいた。 と、何かに気付いたらしいラピードが唸り声を上げたことで、ユーリとアカの視線がエステルを外れる。彼の威嚇する先、町の外れのほうに、いくつかの怪しい人影を見つけた。暗い青色のコートに身を包み、赤いレンズのゴーグルをつけた男たちだ。 「あいつら……」 「え、なに、ユーリくんってば騎士団以外にも狙われてんの?」 「さぁな。こっちが聞きてぇよ」 彼らに見つかると面倒だからと、早めに移動することに決めた。向かうのは東、学術閉鎖都市と呼ばれるアスピオだ。ユーリが追う魔核泥棒はその街の魔導士らしく、既にハルルを後にしたフレンも結界魔導器の修理のために向かったかもしれないとエステルも同行を決め、何故かカロルもついて来ることになった。 あの赤眼って、まさか ×
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