赤星は廻る | ナノ





カロルの場合




武器の合成に必要な素材がいくつかあったため、街からそう遠くない森で小規模な魔物の群れを相手取ることになった。目的のブツを落とす魔物も数匹いるし、この群れを全滅させればすぐ街に向かえるだろう。
事前に決めた陣形のまま敵と対している仲間をそれぞれ眺めながら、同時に術の詠唱に入ろうとアカは後衛に下がった。

(全員目立った外傷は無し、疲労もほとんど見られない…かね)

ユーリとラピードが前線で刃を振るい、次々に攻撃を繰り出している。エステルはヒット&アウェイの形で物理攻撃と魔術による攻撃を使い分けており、レイヴンも全体を見渡しながら己の役目をこなしている。パーティー内で最も火力のあるリタが強力な魔術を次々に発動させて順調に敵を薙ぎ払っていくので、この戦闘もじきに終わるだろう。

アカがその名を口にすれば、数ヶ所にて発動した術が敵を貫き消滅させる。彼女はそこで気を抜かず辺りの警戒に入るが、視界に飛び込んできた影に意識を持っていかれた。
先程から、アカの視界の中を行ったり来たりする緑色の影。あっちにドタドタこっちにバタバタ。なるべく気にしないようにはしているのだが、普段より一回り以上大きな体に無意識に目を向けてしまうのだ。

「ゲロ!」

加えて、あの声。大きな武器を振り上げて攻撃に出る時、敵からの攻撃を防いだ時、ダメージを受けてしまった時などに上げられるあの声は、わざわざそちらを見ずとも半ば強制的に耳に届くものである。
他の者たちは全く気にしていないようでそれぞれの標的に向けて攻撃を放っているが、どうしてかアカには無理だった。

「ゲロゲロゲロ!」

またしても目が追ってしまう。アイアンハンマー+1を振り上げて走っていく、緑色の巨大なカエルを。

「お、アカ轟沈」

「また!?何度目よ!!」

「カロル…やっぱりその格好はやめたほうがいいと思います」

「え、ボクのせいなの!?」

「あんたがそれ着てると、アカが使い物にならないのよ!」

「爆笑しちゃってね」

「あいつのツボって本当に亜空間だな」

「だからボクこんな格好嫌だって言ったんだよ!」

「ならどうして着てるんです?」

「そうよ、嫌ならさっさと脱げばいいでしょ」

「そうだな、結構鬱陶しいし」

「そうね、俺様もそう思うわ」

「うん、着替えてくれるとうちも助かる」

「みんなして酷いよ、無理矢理着せたくせに!」

「誰が?」

「誰だろ」

「誰かね」

「誰です?」

「あたしじゃないわよ」

「え、それって…」





ケロル軍曹はだいぶ不評らしい



※あのDLコスの話





 


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