赤星は廻る | ナノ



魔物に囲まれて、その1

ユーリの場合




「ユーリくん、突然だけどからあげポテトが食べたくなった」

真横に薙いだ剣を戻しながら、襲いかかるキノコのかさを切り捨てる。もう一体が胞子を振り撒くのをバックステップでかわし、地面に剣を突き立て守護方陣で左右と背後の敵を一掃する。

「別にいいけど、ポテト残ってたか?無かったら別のもん作るぞ」

「えー、もう食べる気満々なのにぃ」

「ほら余所見すんな」

熊型の魔物と対峙しながらも、飛ばした蒼破刃がちょうどアカに突っ込んでこようとしていた猪の横っ腹に命中して軌道を逸らし、巨躯の体当たりを免れた彼女がおおと声を上げる。さすがに猪に全力でぶつかってこられて、無事でいられる自信は無い。

「すまんね、助かった」

「も少し周り見て戦えよ」

「だね。…けど、お互い様、さ!」

ユーリの背後にいた鳥の魔物が雷に打たれ、動きを止めた。それに気付いた青年が剣を振り下ろして止めを刺す。アカのほうに目を向ければ、ニヤリと笑った彼女と目が合った。なるほど、今のは『ライトニング』だったか。

「背後に隙あり過ぎさね」

「あんぐらい平気だって」

「そう言って怪我したって知らんよ」

「そん時はしょうがねぇかな」

「ったく…それで心配するのはエステルやカロルたちなんだかんね」

「はっはっは」

「笑って誤魔化さないの」

口を動かしつつ、時には相手に顔を向けつつ、周囲の魔物を次々に薙ぎ払っていく。互いに囲まれた状態だというのに、二人の顔には必死さなど欠片も見当たらず、普段よりも断然いきいきとした目が輝いているだけだ。

「……あの二人、なんであんなに楽しそうなのよ」

それを魔術の詠唱をしつつ眺めていたリタが、呆れたように言った。いっそ二人に任せて休んでいようか。同じように横で支援術の詠唱をしていたエステルが苦笑する。

「それにしても息ピッタリですね、ユーリとアカ」

「同類同士、相性が良いんじゃないの?」

「腹ぁくくれよ?」

「ほーれ、いくよ」

「あ、バーストアーツですね」

「発動まで同時って…」





あいつら、どんだけ息合ってんのよ…





 


……………………

index



×