ある日のこと。真希ちゃんも棘くんも任務に出ていて、乙骨くんは海外へ飛んでいるから寮にはパンダくんと私の二人きり。私たちは共同スペースでのんびりとテレビ番組を見ていた。
パンダくんはお尻が大きいからか、床の上に座る方が落ち着くらしく、ほんのちょっぴり背中を丸めているところなんて本物のパンダそっくりに見える。
私はパンダくんと比べればお尻が小さいので、普通にソファの上に座っているけど。まぁダラっとしているからお行儀良くとはちょっと遠い場所ではあるけれど、私も傍から見ればヒトとそっくりなんだろうな。

六月六日に梅雨入りしてからというもの、ジメジメとした天気が続いていて、外出する度に水溜まりを避けて歩くのがちょっとしたブームだ。パンダくんは傘に隠れるにはちょっと大きすぎて、毎度濡れて帰ってくる。そんな彼がぶるぶると身を震わせて水気を飛ばす時は、いつも真希ちゃんがしかめっ面で距離を取っていたり。

そんな梅雨の最中。私たちが眺めるテレビに映ったCMの中で、社会人の設定らしき男の人と女の人が喋っていた。

『俺、働き始めるまでこんなに仕事が大変だとは思ってなかった』
『当り前よ。お金をもらって仕事をするって、責任がついて回るってことなんだから』
『姉さんと俺が子供の頃からずっと、父さんが仕事の愚痴を言ってるところなんて見たことなくて……俺、改めて“父さんってすごい人なんだな”って思ったよ』
『それ、お父さんに言ってあげたらすごく喜ぶわよ』
『いや……男が面と向かって褒めるって、結構ハードルが高くて』
『ふーん。それならほら、父の日に贈るギフト特集があるわよ』

そう言って女の人――どうやら彼女が姉らしい――が取り出した冊子には、でかでかと「父の日に贈るギフト」という文字が並んでいた。ページを捲り、ネクタイやワイン、高そうなお肉や靴ベラなどを弟役の人へ勧めていく女性。

『へぇー、これ、何でも載ってて誰にでも選びやすそう! すごくいいじゃん! じゃあ俺、この中からとびっきり良い物を選んで、父さんに贈るよ!』
『私はもう選んじゃったもんね〜』
『え!? さすが姉さん……俺も早く選ばなきゃ!』

そのまま『父の日のギフトは今からでも間に合う!』と姉弟が声を揃えて言い、最後に企業ロゴが画面いっぱいに大きく映し出されてから、次のコマーシャルが始まった。

「ちちのひ……」
「うん? どうしたゆき」
「父の日って、『お父さんに日頃の感謝を伝える日』ってことだよね」
「あぁ、そうらしいな」

ふと興味が湧いて、手元の端末で調べてみた。どうやら今年の父の日は六月十七日らしい。母の日のように父に感謝する日を、という思いで始まった、毎年六月の第三日曜日に定められた日。
父、という単語は、私にとって作り主であるお兄ちゃんのことをいうのだろうか。本当の意味での父も母も居ない私は少し寂しさを感じるけれど、私が父の日に興味を持ったのはもう少し違う理由だ。

「……ねぇパンダくん」
「なんだ?」
「去年さ……パンダくんが憶えてるかどうかわかんないけど、百鬼夜行の前にね、パンダくんが『まさみちは“パパ”じゃないけど、俺にとっての“特別”だと思うぞ』って言ってたの」
「……そんなこともあったっけなぁ」
「あの時はパンダくんが冗談で『俺たちの“パパ”が来たぞ』って言ってたし、学長先生も『誰が“パパ”だ』って呆れてたけど……その……本当の“お父さん”じゃないけど、学長先生にはお世話になってるし、えっと……」
「……『父の日』、やりたいのか?」
「う、うん」

やっぱり変かな、とパンダくんの方をちらりと窺うと、彼はちょっと興味深そうな顔つきをしながら、顎の下を黒くて細い指でなぞっている。

「まぁ別にいいんじゃないか? 俺は今までそういうの興味無かったから、やったことなかったけどな。今年は趣向を変えてサプライズ、ってのもアリだと思うぞ」
「付き合ってくれるの? ありがとう!」

嬉しくてつい声が大きくなってしまって、慌てて口を閉じた。学長先生が寮内を歩いていることは少ないけれど、もし聞こえてしまったらサプライズの意味が無くなっちゃう。

「でもどうする? 何か買うにしても俺たちじゃ外出できないぞ」
「そうだよね……」
「棘たちが帰ってくる時になんか買ってきてもらうか?」
「んん……それもなんか……あのね、すごく我儘だなってわかってるんだけど、パンダくんと一緒に選んだのを……プレゼントにしたいな、って……」
「……まぁ、それもそうだな。じゃあなんかオンラインで頼むか?」

着払いかコンビニ受け取りにすればどうにかなるだろ、とパンダくんが言うけれど、言った本人の方が何だか納得していない顔をしていた。

「……パンダくん。もしかして、既製品じゃない方がいいかもなって思ってる?」
「まぁ……モノだけ贈りつけてハイおしまい、ってのもなんだかな」
「そうだよねぇ」

もう私たちは、さっきまで見ていたはずのテレビ番組はそっちのけで『父の日の贈り物候補』について真剣に話し合っていた。最早BGMに格下げされてしまったテレビ画面からは、真希ちゃんと同い年くらいのアイドルが可愛らしい声で「え〜? 手料理はぁ、未来の旦那様に作ってあげるのが夢ですぅ」なんて言っているのが聞こえてくる。

「……手料理?」
「ん?」
「そ、そうだ、手料理! いいんじゃない?」
「おー、いいなそれ。何作る?」
「うーん……学長先生の好きなモノって、パンダくん知ってる?」
「確か『イモリがっこ』だか『いぶりラッコ』だか、そんな感じの名前だった気がするぞ」
「いもり……ラッコ? 肉料理かなぁ……」

二人で私の小さい端末を覗き込み、検索画面に『いぶりらっこ』と入れるとそれらしきページがヒットした。

「……いぶりがっこ?」
「お、たぶんそれだ」
「近いようで遠かったね……お肉じゃなくてお酒のおつまみみたい」
「フーン。んで、どうやって作るんだ?」
「ちょっと待ってね……あ、あったあった。えっと、原材料は大根で……」

大根を燻して、燻製にして、ぬか床に漬ける。

「要は漬物か」
「ま、間に合わないかな」

二人してがっくりと肩を落とした。四昼夜燻すと書いてあるし、漬物は一朝一夕で完成するようなものではない。父の日まで日はあると言っても、いぶりがっことやらを自力で用意しようとすれば、完全に遅刻してしまう。

「よし、『まさみちの好物プレゼント作戦』は諦めるぞ」
「切り替えが早いよ……」
「落ち込んでても仕方ないだろ」

なんとかならないかなぁ。画面を覗き込むパンダくんは別の候補を挙げ始めているけれど、できることなら好きなものを贈って日頃の感謝を伝えたいし、何か近いものを――――

「――――あ」
「なんだ? いいもん見つけたか?」
「いぶりがっこって、大根のお漬物だよね」
「おう。らしいな」

……きっと、この場に他の同級生が居てくれたら、軌道修正ができたんだと思う。

二人とも、早まるな。天啓の無駄遣いだ。冷静になれ。
きっと、ここに誰かが居れば。そう言ってくれるはずだ。

けど残念なことに、貴重な同級生三人のうち二人は任務に出ていて、残りの一人は海外に居て。


「――――大根にしよう」
「名案だな」


つまり、この場にいる私たちが大きく脱線したことを指摘してくれる人は、誰も居なかったのである。


「でもなゆき、大根を育てるのは今からじゃ間に合わないぞ? どうするんだ?」
「……つ、作ればいいんだよ」
「作る?」
「大根の人形を作ろう」
「ゆきオマエ………………天才だな。それなら腐らずに済む」

二人でお小遣いを出し合って、学長先生にお裁縫道具一式と布と綿の調達をお願いしよう。
気付けばそんなところまで話が進んでいた。

普段そんなことは言わなさそうなパンダくんがお願いすると不審がられそうなので、私から学長先生へ電話をかけることにする。

『……もしもし』
「も、もしもし、ゆきです。学長先生、夜なのにすみません」
『別に構わん。どうした?』
「えっと、その……ちょっとお裁縫がしてみたいなと思って、針と……布とか、綿とかを買いたいなと思ってて……」
『……裁縫?』
「は、はい。それで、学長先生がいつも買ってるお店とかがあったら、私たちの代わりに買ってきてほしくて」
『……』

電話口の学長先生が沈黙している間に、私の横で耳を澄ませていたパンダくんに肘で小突かれる。

「おいゆき、私"たち"って言い方じゃバレるぞ」
「あ、し、しまった」
『……真希と合わせて二人分でいいのか?』
「まっ…………そ、そうです! 真希ちゃんと一緒にやります!!」

しっかりと嘘をついた瞬間だった。

『何を作るんだ?』
「え!? な、なに……え、えっと」
『……興味本位だ。別に俺に言わなくてもいい。で、布の色はどうする?』
「色」

隣に居るパンダくんが、自分の端末で大根のイラストを見せてくれたので「白と緑がいいです!」と言葉にする。

『……それだけか?』
「え?」
『他にも何か……水玉模様が入ってる布がいいだとか、英字のアップリケだとか』
「あ、あっぷりけ」

困ってパンダくんに目線で助けを求めると、彼も慌てて検索してくれているようだ。けれど沈黙すればするほど電話口の学長先生に訝しがられそうで……考えるよりも先に、目の前にある色の名称が口から飛び出ていた。

「く、くろ!」
『黒?』
「えっと、あの、はい! 黒と白と緑でお願いします!!」
『そ、そうか……まぁ、狗巻もシンプルなものが好きそうだしな』
「と、棘くんですか?」
『いや、こっちの話だ。ちょうど俺も、明日にでも新しい呪骸の材料を買いに行こうと思っていたところだったからな。ついでに買ってきてやろう』
「あ、ありがとうございます! あとでお金お渡しします!」

なんとか話が纏まったところで電話を切って、私はパンダくんとハイタッチを交わす。

「やった!」
「でかしたぞゆき!」
「じゃあ大根の白いとこと葉っぱのとこで、手分けして作ろうか」
「名案だな。……でも黒なんて何に使うつもりなんだ?」
「う、うーん……?」




今日は何の日?





それから三日間、私たちは誰にも内緒で大根を縫っていた。

一度だけ、真希ちゃんに「学長から『布は足りそうか』って訊かれたんだけど」と不審そうな目付きで尋ねられたものの、どうにか誤魔化して「学長先生に訊かれたら『ゆきが大丈夫って言ってました』って答えておいて!」とお願いして事なきを得たけど。
正直あれはちょっとヒヤヒヤした。

大根の人形作りはなかなかに大変で、お裁縫初心者が二人で組むと進みは正に亀の歩みといったところか。もちろん棘くんにも内緒で作っているので、私の部屋は短期間だけれど出禁になっている。
でも棘くんは父の日が近づくにつれ、何故かソワソワと落ち着かない様子を見せるようになってきていた。付き合っているのに私がパンダくんと話してばかりだから少し落ち込んでいたのかもしれない。ごめんね、棘くん。
そのことに罪悪感を覚えつつも、パンダくんが縫った葉っぱの部分と私が縫った白い身とを合体させて、六月十七日にはなんとか完成させることができたのだ。


……布と綿でできた、どこからどう見ても完璧な『大根の人形』が。


でも当日の朝になってから、ラッピング用品を用意することをすっかり忘れていたことに気付いた私たちは、慌てに慌てた末に伊地知さんに泣きついた。
「これくらいのモノが入りそうな紙袋が欲しいんです」と伝えると、伊地知さんはちょっと困惑した様子で「無地のものならありますが……」とちょうどいいサイズのものを快く分けてくれて、パンダくんと私は二人してお礼を言いながら事務室を後にし、寮の自室へと帰ってきたのがほんの数十分前の話。

「よし。これでばっちりだね」
「おう」
「……学長先生、どこに居るかな? 呪骸倉庫?」
「電話してみるか」

パンダくんが確認すると、どうやら学長先生は用事があって寮まで来ていたらしい。
大根の人形が入った紙袋を大事に抱え、二人で慌てて共有スペースへ下りていくと、そこには学長先生に加えてなぜか棘くんと真希ちゃんと、ついでに五条先生までもが揃っていた。

「え、みんな集まって……どうしたの? 何かあった?」
「別に、私は学長と話してただけだけど。悟はなんで来てんだよ」
「僕はなんか面白そうだったから来ちゃっただけ」
「そ、そうなんですね」
「こんぶ」
「いやオマエが一番なんでだよ。こいつ最近妙にソワソワしてて」
「おかか!」
「してんだろ嘘吐くな」
「いくらすじこ!!」

真希ちゃんと棘くんがワイワイ騒いでいる姿を微笑ましく思いながら、私はパンダくんの手を引いて学長先生の元へ近づいた。

「まさみちー」
「学長先生」
「どうした二人して」
「あの、これ……」

抱えていた紙袋を差し出すと、学長先生は片方の眉をほんのちょっぴりだけ上げて「別に返さなくてもいいんだが」と言いながら困ったように笑う。

「それより上手くできたのか?」
「で、できました!」
「会心の出来だぞ」
「なら良い。……まぁその、なんだ。本人に渡してからでもいいが、写真だけでも見せてくれないか」
「え?」
「ん?」
「うん? もう渡したのか?」
「ゆきが持ってるこれがそうだぞ」
「……なら先に俺に渡してどうする。そこに本人が居るんだ、俺は狗巻が開けてからでいい」
「と、棘くんですか?」
「ツナマヨ?」

呼んだ? と言って、てこてこと近づいて来た棘くんが不思議そうに首を傾げている。

「あっ、スマン。サプライズだったな」
「は、はい、そうなんです。なので棘くんにも内緒で」
「まさみち、早く開けろよ」
「こ、この距離で俺を経由する必要があるのか?」
「けいゆ?」
「……それ、まさみちのだぞ?」

パンダくんの言葉を受けて、困惑したような表情を浮かべた学長先生は「まさか、真希のが狗巻宛か?」と訝し気な声を出した。
そんな私たちの会話が聞こえたのか、「私がなんだって」と言いながら真希ちゃんと、ついでに五条先生までもがくっついて来て、今度は私の方が困惑してしまう。

「僕のことハブにしないでよぉ。なになに? なんか面白い話?」
「てっきり真希はパンダか乙骨にかと思ったんだが……」
「真希は関係ないぞ」
「……真希と作ったんじゃないのか?」
「私と? ……ゆき、なんの話だよ」
「い、いえ、真希ちゃんじゃなくてパンダくんと一緒に」
「…………なんでだ?」

心の底から疑問に思っていると言わんばかりの顔つきで学長先生が首を傾げ、私とパンダくんも顔を見合わせて同じように首を傾げた。

「えっと、『父の日』なので?」
「父の日……?」
「まさみちに、俺たち二人からの『父の日のプレゼント』だ」
「………………」

ぽかんと口を開けた学長先生に紙袋を渡して「開けてください」と促すと、言われるがままに紙袋のシールを剥がした学長先生が中から『贈り物』を取り出し、もう一度首を傾げた。それを見た五条先生は「ダッは、え、ナニコレ!? うわウケる」なんて失礼なことを言ってスマートフォンで写真を撮っている。

「……なんで大根なんだ?」
「パンダくんが、学長先生はいぶりがっこが好きだって」
「でも漬物作るのは時間が足りなかったからな。同じ大根だし、これなら腐らないからいいだろ」
「…………この、黒いのは」

学長先生が指差すのは、大根の白い部分の上から三分の一の場所に私が縫い付けた、黒い布の部分だ。横長の長方形を二つ横に並べ、間に細く橋を渡した形のこれは、見ていたパンダくんも「なるほどその手があったか」と満足げに頷いていた渾身の力作である。

「サングラスです!」
「なかなかの出来だろ、ゆきの案だぞ。まさみちと同じサングラスでお揃いにしたんだ」
「お、おぉ……」
「すみません……呪骸じゃなくて、動かないただの大根のぬいぐるみなんですが……」
「もうちょっと大きい方がよかったか?」
「……いや、これがいい。ありがとうな。お前たち」

優しそうに笑った学長先生に頭を撫でられて、パンダくんもご満悦そうだ。もちろん私もぐりぐりと頭を撫でまわされて、そんな私たちの姿を五条先生が爆笑しながら写真に収めている。

「学長、顔がにやけてますよ」
「煩いぞ悟」
「悟ー、撮影会するなら皆が一緒に入ったヤツ撮ってくれ」
「明太子!」
「お、ナイス棘。それなら立て掛けて撮れるな」
「五条先生のソレってタイマーできますか? 学長先生は真ん中に立ってもらって、五条先生は背が高いから後ろに回って……」
「あとで私にも送れよ」
「ツナツナ」
「お前たち、ちょっと近すぎないか……」
「何言ってるんだ、今日はまさみちが主役だからな。くっついて撮らないと俺も悟も見切れちまう」
「学長、ちゃんと笑ってくださいよ? ……あとで引き延ばして一年の教室の壁紙にでもしちゃおーっと」
「悟」
「アハハ、冗談ですってば。ハイみんな、イケメンが撮りますよ〜」
「はーい!」






パシャリ。






先生から共有してもらったその写真は、乙骨くんも見れるようにすぐにグループチャットへと送って追加で「日本は梅雨真っ盛りだよ」とメッセージも残す。
少し経って、既読がついたそれへ乙骨くんが返してきたメッセージは「それ、なんの大根?」というもので。

「……学長、せっかくもらったんだから名前とか付けてあげたらどうです?」
「名前か……」
「特に思いつかないなら僕が付けちゃおっかな〜。ど根性正道とか?」
「アスファルトにでも植えるつもりか」
「あすふぁると?」
「まさみち大根とかでいいんじゃないか?」
「すごい、何かのブランド野菜みたいだね」
「……まぁ、いいんじゃないか」
「えー、軽ぅ」

――――まさみち大根だよ!
――――そっか、よくわかんないけどみんな元気そうでなにより
――――乙骨くんがいないとちょっと寂しいかも
――――僕もこっち来たばっかりだけど、ちょっとホームシックになっちゃいそう

「こんぶ」
「ん? あ、えっとね、棘くんの分もあるよ。大根じゃないけど、余った布で蛇を作ってみました」
「……! しゃけ!!」

もちろん、これも人数分ある。巳年の棘くんと乙骨くんには蛇で、午年の真希ちゃんには白い馬。パンダくんにはもちろんパンダ。五条先生にはサングラスの形にしてみた。
流石に立体のぬいぐるみを作れるほどの力量は無いので、クリスマスツリーに飾るような手乗りサイズのオーナメントのようなものだけれど。

「へぇ、よくできてるね。……なんで蛇だけはカラバリあんの?」
「わ、五条先生」
「高菜!」
「盗らないよ、失礼だなぁ」
「えっと、乙骨くんはスタンダードに緑の蛇にしたんですけど、同じ色よりは違う色で作ろうかなって」
「へぇ?」
「そ、その……棘くんは、呪印が黒だから、蛇も黒に……」
「……じゃあその白蛇は?」
「ツナマヨ」
「わ、私の……私の呪印、白だから……お揃いに、しちゃった」
「しゃ……しゃけ」
「ヒューヒュー! 熱いねぇ!」
「っ明太子!!」
「と、撮らないでください! 肖像権の侵害ですよ!」

――――乙骨くんが帰ったらプレゼントあるからね!
――――そうなの?
――――それか、今度五条先生がそっちに行く時に持ってってもらおっかな
――――ありがと、楽しみ!

「ふふ」
「いくら?」
「あ、ううん、なんでもないの。早く乙骨くんに会いたいね、って」
「しゃけしゃけ!」


+++++
――――今日は何の日?
――――今日は父の日、まさみちの日!

2021.06.20

  

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