目を覚ますと見慣れない天井に数秒固まったが、直ぐに昨日ホグワーツに入学した事を思い出して起き上がった。

今何時なんだろう。
まだ荷解きしていないトランクの中から兄が持たせてくれた時計を取り出して時間を確認する。何時もより早く起きれたみたいだ。でも、授業が何時からなのか全くわからないから急いで支度をしなければならない。
ベッドを降りて、洗面所へと向かう。冷水で顔を洗うとすっかり目が覚めてそのまま制服へと着替える 。シャツとスカートを履いて、ネクタイを手に取ると、ネクタイの色が赤く変わっているのに気が付いた。昨日までは黒だったのに。此処に来てから不思議な事だらけだ。

「朝御飯、食べに行かなきゃ…」

食べる場所は、昨日の大広間でいいのかな。朝御飯を食べるだけなら荷物はいらないだろう。一応杖だけをポケットに入れて談話室に降りて、道はまだわからなかったから、丁度同じタイミングで寮を出た上級生達の後ろをついて行く事にした。

「Msミョウジ」
「っは、はい」

大広間に着くと、昨日と同じ端の席が空いていたからそこに座る事にした。一人ぼんやりとパンをちぎって口に運んでいると、目の前に現れた先生に危うくパンを喉に詰まらせそうになって少し咳き込む。先生は手に持っていたたくさんの紙の中から一枚を私に差し出してきた。

「時間割です。無くさないように」
「あ、ありがとうございます」

それだけ言って先生は他の人にも同じよう声を掛けていった。食べかけのパンを一度お皿に置いて、受け取った時間割に目を通すと、授業まで結構時間がある事がわかった。これなら一番最初にやる授業の教科書をあらかじめ少し訳す時間くらいあるだろう。
そうと決めれば早速部屋に戻ろう。残りのパンを急いで飲み込んで席を立つと、丁度大広間の入り口からルーピンくんが入って来たのが見えた。声を掛けまいか悩んでいるとルーピンくんの後ろからルーピンくんに話し掛ける人達の姿があって開きかけた口を閉じた。
仲が良さそうな四人にやっぱりいいかな、と俯いたまま進むと視界に靴が映り込んで顔を上げる。

「おはよう、ミョウジ」

ゆっくりとした聞き取りやすい口調に優しい笑み、顔を上げると、目の前にはルーピンくんが立っていた。ルーピンくんの後ろには一緒に居た人達は居なくて、ルーピンくんの手に時間割の紙が握られているのが目に入った。

「ミョウジ?大丈夫?どうかした?」
「え、ううん、なんでもないよ。おはよう、ルーピンくん」

返事がないからか不思議そうな顔をしているルーピンくんに慌てて挨拶を返せば、ルーピンくんは「ならよかった」とだけ言って「またね」とテーブルの方へと歩いて行った。
声、掛けてくれた。嬉しくて頬が緩むのを感じつつ、大広間を出るために再度足を動かす。
友達になったといってもルーピンくんは優しいしきっと友達も沢山居るのだろう。そんな沢山の中の一人である私にわざわざ声を掛けてくれるだなんて、やっぱりルーピンくんは優しいな。

途中でルーピンくんと一緒に居た人達が先生から時間割を受け取っているのを横目に大広間から出た。
頑張らなきゃ。そう心の中で呟きながら小さく息を吐いた。