目が覚めると昨日最後に見た天井が視界に広がり、あぁ夢じゃなかったんだとベッドを出た。
そういえば昨日は何も食べないで寝てしまったな、とぐううと空腹を訴える音にリビングの扉を開けて、


「お、やっと起きたか」

「ラッセルーおかわりー」


閉めた。

何か知らない人が居たんですけど。
てか一人ご飯食べてたんだけど。
私寝ぼけてるのかな。
目を擦ってもう一度扉を開けようとして肩を叩かれた。


「ぎゃあああ!」

「あれ、デジャヴ」


驚いて悲鳴をあげて聞き覚えのある声に振り向いみればハンディーさんが左腕(と言っても半分しか無いが)を私の肩に乗せて立っていた。
な、なんだハンディーさんか…ってあれ?なんで居るの?


「街案内しようと思ったんだけどお前起きてなかったから。起こすのも悪いと思って。あ、トイレ借りた」

「あ、はい。そうだったんですか…。じゃあリビングに居る二人は…」

「おい…何で閉めて…お、ハンディーか。取り込み中か?」


誰ですか、と言おうとした言葉は開いた扉によって遮られた。
扉から出てきたのは水色の髪をしたいかにも海賊っぽい格好をした男の人で、私とハンディーさんを見てにやにや笑いだした。


「お前が思ってることは一切無いと思え。ラッセル」

「んだよ、つまんねぇな。まぁいい、お嬢さん朝食出来てるから入れよ」

「あ、どうも」


にこりと笑うその顔に不覚にもときめいてしまって、入れよとか言ってるけどここ私の家だよね?とかいうツッコミは心の中でぐっと堪えた。
扉を開けてくれたラッセルさん?は意外に紳士なんだなと思いつつ、食事が並んだテーブルの椅子に座ると向かい側には魚を頬張りながら此方を見てくるラッセルさんと同じ水色の髪に、耳に大きな鹿の角のピアスをした男の人が居る。


「悪いな。こいつら勝手に着いてきてな」

「いえ、別に構いませんけど」

「お、ハンディーさりげなく隣に座るとかやっぱ「ねえよ」


またにやにやとしだしたラッセルさんにハンディーさんが笑いながら返す。
とゆうより向かい側の視線が痛いのですが。
とりあえず自己紹介しよう。
初めまして、なまえですよろしく。と言うと俺ランピーねーよろしくと普通に返ってきたが、視線は私に向いたままだ。
なんだか気まずくて箸を手にとって俯きながら魚をつついていると、急に目の前が暗くなった。
顔を上げると至近距離にランピーさんの綺麗な顔があって悲鳴をあげなかった自分を褒めてほしい。


「ねえねえ」

「な、んでしょうか」

「俺と付き合わない?」


は、と固まるとするりと頬を撫でられ顎を掴まれて上を向かされた。
なんだこの状況は…!
視界の端でラッセルさんがにやにやしていて、ハンディーさんは溜め息を吐いていた。
いや、見てないで助けろよ。
ねっ?と可愛らしく首を傾げるランピーさんにだ、だが断る!と言えば、ランピーさんはえー、と頬を膨らませた。
とりあえず離してください近いです。
じゃあ付き合おうよ。
なぜに。
なんとなく?
だが断る。
そんな会話を繰り返していればハンディーさんがそこまでだと言ってラッセルさんがランピーさんを椅子に戻してくれた。


「もー、ハンディー邪魔しないでよー」

「三角関係ktkr!」

「ラッセル黙れ。大丈夫かなまえ」


大丈夫の意味を込めて笑って頷くとハンディーさんも笑ってくれた。
俺の扱い!と叫んでいるラッセルさんはもう無視だ。


「つーかお前彼女いるだろ」

「えー?いるけど今3人しかいないよー?」

「よし、死ね」


ラッセルさんとランピーさんの会話にあぁ、ランピーさんってそういう人だったのか、と納得してしまう。
確かに顔はいいが女の敵め。
きっ、と睨んでやれば何を勘違いしたのかなまえちゃんが付き合ってくれるなら別れるよーと言ってきた。
もう何を言っても無駄だと思った私は大人しく味噌汁を啜った。


「ところでこれ誰が作ったんですか?」

「俺だけど。どうだ?」

「すごく美味しいんですけど」



そう言えばラッセルさんは満足そうに笑った。

惚れたか?と続けたラッセルさんにこの人モテないだろうな、と魚を口に運んだ。



(121109)我が家のラッセルは残念なイケメンです。