「そんなことがあったんだな」


ラッセルさんはそう言うと、泣き疲れたのか私の膝の上で寝てしまったカドルスくんに目をやりコーヒーを一口飲んだ。
カドルスくんのふわふわした金髪を撫で、赤くなってしまっている目元がなんだか痛々しくて眉を下げた。

あの後、カドルスくんは今まで溜め込んでいた全てのものを吐き出す様に泣いた。
そしてぽつぽつと自分の事を話してくれたのだ。
トゥーシーくんに嘘をついていたこと、此処に来る前のこと、自分が捨てられたこと。
置いてかないで捨てないでと懇願してきたカドルスくんを私はただ黙って抱き締める事しか出来なかった。

トゥーシーくんは、どうしているだろうか。
カドルスくんに悪気は無かったとはいえショックだっただろう。
二人はすごく仲が良いらしいし、ギグルスちゃんも二人が喧嘩をした所は初めて見たと言っていた。


「喧嘩、かぁ…」


それで片付けてしまっていいのだろうか。
わからない、わからないけれど、二人には仲直りをして欲しい。
出来るだろうか。
いや、出来る。
公園でトゥーシーくんと話した時の事を思い出す。
あんなにも真剣にカドルスくんの事を話してくれたのだ。
出来るに決まっている。
そう一人で決めつけながら眠っているカドルスくんに微笑めば、いきなり隣から手が伸びてきて私の目を覆った。
暗くなった視界に私は多少驚いたものの直ぐに状況を理解し口を開く。


「いきなりなんですか…ランピーさん」


こんな事をするのは隣に座っているランピーさんの仕業でしかない。
私がそう言えばランピーさんは「んー…別にー」と答え、手を離してくれた。
明るくなった視界にランピーさんの方を見ようとしたが、ランピーさんはソファから立ち上がり「ラッセルーお腹すいたー」と漫画を読んでいたラッセルさんの背中に寄り掛かっていた。

一体何だったんだと首を傾げていれば、ギグルスちゃんが隣にやって来て興奮したようにランピーさんとラッセルさんを見て熱く語りだしたので私は苦笑を浮かべた。



(140108)次でカドルス、トゥーシー編はおしまいです。