「前々から思ってたんですが、ハンディーさんどうやって食べてるんですか」


そう言えばハンディーさんは困ったように笑った。
しまった、聞かない方が良かったか。
言いづらそうにしているハンディーさんに謝る。

ハンディーさんの家にてお昼ご飯を御馳走になってる、なう。
二人で食卓を囲みながら久々に食べるお肉を涙ぐみながら口にしていると、もう既にお皿を空にしていたハンディーを見てふと思った疑問を口にしてしまった。


「あー、いや、疑問に思うのも当然だよな」

「いえ、あ、私片付けますよ」


食べ終わった食器を片付けようと立ち上がったハンディーさんにそう言うと、ハンディーさんはさんきゅ、と笑った。
人の過去を詮索するのはあまり良くないものだ。
辛いことや嫌なことだってあるだろうし。
それこそカドルスくんのがそれだろう。


「まあ企業秘密ってことで頼むよ」

「別に構いませんよ。あ、でも本当に大変なときは言ってくださいね」

「ん、さんきゅ」


良かった。
人を困らせるのはあまり良い気持ちじゃない。
それからは二人でお茶を飲みながら談笑をしていた。
最近ランピーさんが彼女と別れたとか、双子の泥棒に気を付けろとか、当たり障りないことだ。


「そういえばギグルスの母親さんがお前の話ししてたよ」

「え、私なにかしたかな」

ギグルスママとはあれ以来たまにスーパーで出くわすと談笑するようになった。
といっても一方的あちらが話しているんだけれど。
話の内容は…まあ、わかるだろう。


「ギグルスん家の屋根修理しに行ったときに聞いたんだけど、お前ギグルスと仲良くなったんだな」

「あー、まあ…それなりに…」


何故か嬉しそうにしているハンディーさんに苦笑いして頷く。
ギグルスちゃんとはあれ以来会っていない。
見かけることはあってもその隣には必ずと言ってもいい程知らない男の人がいるからだ。
カドルスくんが好きなんじゃなかったのか。


「ラッセルからカドルスとの事聞いてたからな、心配だったんだ…でも仲良くなれたなら良かった」


な、なんなんだこの人!
本当に嬉しそうに笑うハンディーさんに私のハートはドキドキです。
ハンディーさん私の癒し要員、決定。


「トゥーシーとも公園で缶けりしてたよな」

「え、あ、それはきっとただトゥーシーくんに缶を蹴り当ててただけだと…」


公園での一件のとき、ゴミ箱シュートに失敗した私を鼻で笑ったトゥーシーくんに苛ついて、地面に落ちた缶を私はトゥーシーくんに蹴り当てた。
蹴り返されたけど。
てゆうかなんでハンディーさんが知ってるんだ。
見てたのか、見てたのか!?


「丁度モールんとこの屋根を修理してたんだ。上から見えた」

「屋根の修理多いなおい!」


ハンディーさん曰く窓ガラスの修理も多いらしい。
なぜかと言えば窓や屋根をぶち破ってくる泥棒やら不審者やらがいるとか。
なにそれこわい。
身の危険を感じた私は窓に鉄格子でも嵌めようかと考え始めた。


「その調子でカドルスとも仲良くなれればいいな」

「あ、はは…」


やっぱり鉄格子はやめよう。
周りのお宅に変な趣味持った奴だと思われたくないし。
某赤毛兄弟が空飛ぶ車が迎えに来てくれる訳でもないし。
ハ●ー、君を迎えに来たんだ!なんてね。
おっと話が逸れた。


「カドルスも悪い奴ではないんだ。ただちょっと過去にあっただけで…」

「聞きました。ご両親のこととか…」


そういえばトゥーシーくんがいなくなることもあるって言ってたよな。
それについて聞こうとハンディーさんの顔を見ると、不思議そうな顔をしていた。
ん?


「あの、どうかしましたか?」

「あ、いや……



両親って…何の事だ?」


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