新入りがやって来た。 その事はそれほど広くなく住民もいないこの街に直ぐ様広まった。 第一印象は 普通 だ。 正直悪いが、特に何か優れている訳でも無さそうだしランピーやラッセル、ハンディーなんかと並んでいると更にその普通さが更に目立つ。 「(まあ俺も人の事は言えないんだろうけど。)」 周りに特別目立つ奴が居たからか俺はいつもおまけみたいな存在だった。 だから俺は特別になりたかったし、だからキラキラ輝いてるヒーローが好きなのだ。 俺はヒーローになりたかった。 なんて言えば確実にあいつらに馬鹿にされるだろうけど、それでもヒーローは無理でも周りにいる奴等と対等に、あいつと同じになりたかった。 悩んでる奴がいたら相談に乗ってやったし、いじめられてる奴を助けてやったこともある。 自己満足でもあった。 俺はすごいんだ、おまけなんかじゃないんだって皆に見せつけてやりたかった。 それでも礼を言われるのは嬉しかったし、あいつにすごいねと言われる度に胸が満たされるのも感じた。 結局は自分のことばかりだったんだ。 だから気づけなかったんだ。 あいつの変化に。 「どういうこと、だよ」 カドルスの両親がいなくなった。 それを知ったのは夜、カドルスが突然俺の家に訪ねて来たときだ。 パパとママがいなくなった。 カドルスは笑っていた。 「きえちゃったの。きえちゃった。みんな、きえちゃった」 「お、おい、カドル」 「トゥーシーは」 「僕を一人にしないよね」 あの時俺は、カドルスに何をしてやれたんだろう。 俺は何て言ってやればよかったんだ。 なにがヒーローになりたいだ。 友達の、親友の変化にすら気づいてやれなかったんだ。 俺は、なにもできなかった。 俺は、 なんて無力なんだろう。 ⇔ 「は…?あの新入りに?」 カドルスと約束している為ギグルスと合流し公園に向かう。 向かいながら話す話題はつい最近やって来た新入りの話だ。 「そ。カドルスのこと、話したの。まあアンタよりは詳しくは知らないしほんのちょっとだけよ。 でもなまえはさして気にしてないみたいだったわよ。 カドルスのことも好きじゃないって」 「それまさかカドルスの前で言って…」 「違うわよ。昨日なまえが家に来たから聞いてみたの。本人の前で言わない方がいいっていう忠告もしておいたわ。 …にしても変わってるわよね。カドルス、正直めんどくさいし嘘ついておけばいいのに」 みんなそうだったもの。 ギグルスの言葉に視線をギグルスに移す。 ギグルスは風で乱れた髪を手櫛で整えながら小さく溜め息を溢した。 「………変わってるのは、どっちなんだろうな」 ギグルスが驚いた様にこちらを向く。 その目に浮かんでいる光に新入りの顔が浮かんだ。 「期待、してるんだろ」 「………」 「あの新入りに、期待してるんだろ」 ギグルスはしばらく俯いた後、ゆっくりと顔を上げて下手くそに笑った。 「あんたもね」 ぐしゃり 降ってきたトラックにギグルスの姿は無くなった。 飛び散る赤にはもう見慣れてしまった。 「そうだな」 俺はヒーローにはなれないから。 (130622)だからどうか、 |