なんでもない夜、二人で食べた夕飯の食器を洗い終わってソファで何をするわけでもなく寄り添っていた。
「ねえあおちゃん。もうすぐ今年も終わるね。」
ぽつり、ぽつりとヤマト君が話し始めた。

【閉】

「春はお花見をしに行ったね。お弁当と、レジャーシート持ってさ。天気が良くて、桜が綺麗であおちゃんのお弁当は美味しくてさ、つい眠っちゃったよね。」
そうだったね。うとうとし始めたヤマト君が僕の膝で眠るものだから、知らない人に仲良しね。なんて言われて、恥ずかしかったけどすごく嬉しかったなあ。

「ふふ、あおちゃんの膝は柔らかいからついね。夏はお祭りに行ったね。あおちゃんの浴衣姿が綺麗すぎてなんだか急に手を握る事も恥ずかしくなって、それを見たあおちゃんまで赤くなって。あの夜の事は忘れられないなあ。綺麗な思い出だ。」
ふふ。僕が赤くなったのはヤマト君が格好良かったからだよ?でも、手を繋ぐ事だけであんなに幸せに感じたのは生まれてはじめてだったなあ。ヤマト君の手、暖かかった。

「子供体温だからね。秋はちょっと遠くまで紅葉を観に旅行したね。綺麗だったなあ。涙が出るくらい綺麗だったよ。あおちゃんが隣で静かに泣いててさ、ああ俺はこの人とここに来られてよかったって心から思ったなあ。」
恥ずかしいな、すぐに拭いたのに見られてたのか。ヤマト君が隣にいたから、あんなにも綺麗に目に映ったんだと思うよ。僕もヤマト君と見られて幸せだったよ。ずっと忘れない。

「もうすぐ冬が来るね。」
そうだね。
「あおちゃん、俺たちお別れしよう。」
理由を、聞いてもいいかな?
「あおちゃんが大好き。きっと産まれてから死ぬまでずっと君の事が好きだ。だから、お別れしよう。君との思い出で俺は生きていける。もう、充分過ぎるほど幸せなんだ。過ぎた事を望んで君を失いたくない。我儘でごめんね。でも、」
でも、もう決めたんでしょう?ヤマト君が決めた事ならもうそれは決定事項なんだ。うん。僕達お別れしよう。

今までありがとう。大好きだよ。

それから彼と一切会う事は無くなった。僕はまだ一人でいる。きっとこれからもそうだろう。
彼は今何をしているのだろうか?生きているのか、いや、きっとそれは。

また春が来る。君の面影をさらいに。

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