思うに俺は何かを守ってしまう性なのだろう。
下校途中、高架下から何やら騒がしい声が聞こえてきた。普段は人通りの少ない場所だけに気になって覗いて見ると、学生服を着た連中が暴れていた。
馬鹿馬鹿しい。高校生同士の喧嘩だろう、ここら辺では珍しくもない。自分もそれに参加する事も多々ある。理由はほぼあのふわふわとした幼馴染みが関係しているのだが。
放っておこうとその場を離れようとすると足元に毛玉が纏わり付いて来た。その毛玉はよく見ればボロボロの子猫だった。体中に何かをぶつけられた様な傷がある。子猫はにゃあん、と弱々しく鳴いて必死に足に纏わり付く。
どうしようかと考えていると先程の集団からやかましい声が聞こえた。
「てめえら卑怯なんだよ!自分より弱いもん虐めやがって、情けねえんだよクソ野郎共!」
金髪の学ランを着た男が叫んでいた。よく見れば集団の中で学ランなのはそいつだけだった。
「ぶっ殺してやる!てめえら全員二度と弱いもん虐めなんかできねえ体にしてやる!」
金髪は吼える。
嗚呼、そういう事か。しかし金髪一人に対し相手は十数人、加えてバットなど物騒な武器まで持っている。きっとこの猫の傷の中にはあれで殴られたものもあるのだろう。
集団の一人が金髪目掛けてバットを振り下ろした。
にゃあん。また、猫が鳴いた。
「お前、後ろに油断しすぎだ。」
気づくと俺はバットを持った男を蹴り飛ばし、金髪に言った。
「は?誰だよあんた。」
そう尋ねられたので考えた末に、
「味方だよ。そこの猫のな。」
そう答えた。
「ふぅん、俺もだよ。じゃあ大事なもん守る仲間って事で!」
…
「おい!全員もう立てねえみてえだ、救急車呼んでずらかるぞ。」
二対大勢。大勝利と言ったところか。
俺と金髪は走った。もちろん猫は金髪の学ランの中だった。
ここまで来ればもういいだろう。立ち止まると、
「あんた強過ぎ…。相手半泣きだったじゃん…ありがとう、助けてくれて。あ、こいつの事だからな!」
別にいい、それよりもその猫をどうするつもりだと尋ねると自分が飼うとそいつは言った。
「猫って何食べるんだ?あ…そういえば俺昨日からなんも食ってない…」
そう言った途端そいつはその場にぶっ倒れた。
一体どうしろというんだ。猫を見ると嬉しそうににゃあん、とまた鳴いた。
「俺のアパートすぐそこ…飯作って……あと俺の名前やまとだからね、先輩?」
飯は作ってやるから歩けとボロボロの野良猫をひと蹴りした。
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