小説 | ナノ
※高尾が緑間の下で働いてる忍者で緑間が当主
※モブが出ます
はぁ、と白い息が洩れだした。
服の中に着込んだ冷え切った鎖帷子が直に肌に触れていた。
屋根の上から見る景色に優越感すら覚えるが、実際はこれ以外能がないだけ。
びゅーびゅーと北風が頬を掠める。
全て主様の側近伝いで任務報告をする俺は、ぶっちゃけ主様の顔を見たことがない。
だから、ここら辺りを統治してるらしい主様に俺は忠誠心の欠片も持ち合わせていない。
俺は、ただ自分が生きるために忍者なんてものをしてるわけで、仕事も諜報だから人殺しなんてしたことがない。
ただ人より少し視野が広い。少しだけ、
「さっみぃなあ」
お月様と、満天の星が俺を見下ろしていて、時たま見かける同業者たちに元気だなあ。と、さも他人ごとのように呟いてみる。
この前出会った、今俺を見下ろす星のようにキラキラした緑の目の男を思い出した。
主様の側近に報告に行くとき、偶々中庭で見かけた。
高貴な身分に見えた。
きっと来賓か何かだろう。
毅然とした態度と、如何にも人を統治してそうな威厳のある面影、
ばっちり目が合ってドキッとして、どうしようか迷った挙げ句、少し接待した。
慣れないことではあったけど持ち前の性格で何とかなった。
彼は中々面白い人で、また会いたいな、なんて叶うはずない願いを潜ませる。
びゅっと強い風が吹いた。
「鷹、の調子はどうなのだよ。」
「問題ありません。」
「そうか。今回の事が片付いたら、鷹を呼べ。直々に話しがしたいのだよ。」
「今回は勝手をしないのですね」
「盗み聞きは止めろ」
「いえいえ、これも主様、緑間家当主の真太郎様の身をお守りするためにございます。」
あの緑のキラキラした目の男の人は、今どこで、どんな話しをしてるのか。
それを知るのはもう少し後、
叶わない恋に想いを馳せる
(夢で終わらせれば良かったと後悔するのも、もう少し後、)
*130219
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