小説 | ナノ
 
※卒業前設定


好き。好きだよ。
好きだよ、真ちゃん。

なんて言えたら楽なのになあ。自分の感情を曝け出してしまえば心が軽くなるだろうな。なんて考えては首を振る。
ダメダメ。
真ちゃんに不快な思いをさせたくない。
男に告白されて嬉しいわけない。
何より真ちゃんとの今の関係が崩れるのが怖くて怖くて仕方ない。

でも俺、男だから。
真ちゃん見てると我慢出来なくなりそう。
逞しい背中を見ながら、後ろを歩くのは心地いい。背中を任せられた気分になって、胸が弾む。


「後方以上なし!」

「いきなり何なのだよ」


前を歩いていた真ちゃんが振り返って、漫画の読み過ぎだって言って苦笑する。呆れて笑ったのは知っているけど、真ちゃんが笑った!

真ちゃんはまた前を向いて歩き出す。目的地は本屋さん。学校帰りに、ちょっと寄るだけ。
真ちゃんは歩く時は横に来れば良いのに。って言ってくれるけれど、俺は後ろがお気に入りだった。誰かに会ったら、真ちゃんの隣を取られないよう横に行くけれども。


「真ちゃん」

「なんだ」

「もうちょっとで卒業だねえ」

「そうだな」


俺も真ちゃんも、推薦で大学は決まっていて、他の受験生よりピリピリもしてないし、ゆとりがあった。
俺たちはあと1ヶ月で卒業だ。
つまりお別れ。
大学は、別々だった。
会えないことは無いけれど、真ちゃんは医者を目指してて、推薦の大学にも医学部で入学するとか、実際真ちゃんには医学部に行ける頭脳も持ち合わせているし、俺も応援している。だけど、大学に入ると医学部は、やたら忙しそうだし、バスケだってするし、つまり事実上、もう会えない。
会えなくなるのは俺と真ちゃんが、他の誰とも変わらない「友人」という枠の中に収まってしまっているからで、違う立場なら会えるかもしれない。
もっと真ちゃんの内部へ、
もっと真ちゃんの奥底へ、


「ねえ真ちゃん、」


嫌いだった。好からぬ企みをする自分が、理性が崩壊してしまいそうになる自分が、痺れを切らす自分が、零に近いと分かりながらも心の何処かで期待してる自分が、
全部全部、真ちゃんに言いたくて、膨れた汚い感情。
三年間溜め込んだ、いけない感情。
嫌い嫌い。
でも真ちゃんは大好き。
三年間で膨れ上がった「好き」


「好きだよ」





















「高尾…?」


あーあ。言っちゃったよ。
ごめんね真ちゃん。
不愉快だよね。嫌だよね。
俺だって嫌だよ。俺が
嫌いになって良いよ。でも嫌いにならないで、
真ちゃんに嫌われたらきっと死んでしまう。








揺れる君の瞳に

(酷く恐怖を感じた)





*130118


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