小説 | ナノ
 
※高尾と緑間が社会人になって同棲してます。


体調管理も尽くせる人事なのだよ!!だから風邪を引くな!!とか風邪気味の俺に口が酸っぱくなるまで言ってた真ちゃんが、風邪を引きました。


「今日1日は安静に、なのだよ」

「げほっ、真似をするな…」


ピピピ、と電子音が鳴り、体温計を取った。37.9と記されたソレを容器に仕舞って、ベッドの方に寄せたテーブルの上にある冷えピタをペタンと真ちゃんの額に貼ってやると、ひゃっ、と滅多に聞けない可愛らしい声を上げて、ぎゅっと目を瞑る真ちゃん。

俺の風邪が治ってすぐに真ちゃんが風邪を引いたから移してしまったかもしれない。

何時もよりトロンとした目を閉じると、長い睫が一層印象強く見えた。


「仕事、どうしよう」


目を開くのすら怠いのか、真ちゃんは目を閉じたまま、何時もの語尾を忘れて不安げに訴える。


「ちゃーんと電話しといてやるよ」


安心させるよう真ちゃんが目を瞑っているのにも関わらず携帯をヒラヒラと見せる。


「高尾は…?」


すると、ゆっくりとした動きで瞼をあげて、ゆったりとした口調で、またも不安げに真ちゃんは問いかける。熱のせいで真っ赤に染まった頬に苦しそうな呼吸音、首筋に光る汗、真ちゃんの全てが煽情的で思わずゴクリと唾を呑んだ。


「っ…休むって!病人の真ちゃんを置いて仕事なんて儘ならねーし」


本当は強がって「行くだろ」とか「行け」とか言いたいんだろうな。だって真ちゃんだもん。でも目は明らかに安堵していて、目は口ほどに物を言うって、この事だろうな。面白くて、くすりと笑う。


「会社には電話するし、俺も居るから、ほら、目ぇ閉じて!」

「うん…」


布団を肩まで上げて、ポンポンと胸を軽く叩いてやると、何時もより弱気でちっちゃい声で、まるで小さい子供みたいに、どこか申し訳無さそうに、でも確実に真ちゃんは「ありがとう」って言った。


「バーカ。当たり前だろ!何時も我が儘なクセに、こんな時だけ変に謙虚になるなよ。」


絶対聞けない真ちゃんの言葉に頬が緩む。ありがとうって素敵な言葉だ。言われただけで気分が良い。ああでも真ちゃんだから余計にかもしれない。真ちゃんの髪を梳かして、眠りを促す。真ちゃんはパチパチと何度か瞬きをして、やがて、すぅっと瞼を閉じた。


「おやすみ。真ちゃん」


ちゅ、と瞼に口付けを落とすと、ピクリと反応する真ちゃんが可愛くて、また笑みが洩れた。

暫くしてから、部屋を出て台所に向かう。さっさと会社へ電話を済まし、休むと伝えた。携帯をポケットに突っ込んで、棚を漁る。


「おしるこの粉末切れてる……」


この前買ったばかりなのに、と呆れて溜め息を零す。食費の1割は確実におしるこ代に消えている気がしてならないのだが、仕方ない。真ちゃんのおしるこは、また今度2人で買いに行こうか。真ちゃんの風邪が治ったら、そしたらついでに真ちゃんの好物を沢山作ろう。で2人でいっぱい食べよう。今は俺が気が向いたらと、真ちゃんのおしるこが突然切れた時用に買っておいたココアで我慢してもらおうか。真ちゃん目覚ましたら怒るかな。おしるこが無いって、でも真ちゃん、ココアも好きだから、あまり怒らないかもな。風邪も引いてるし

ティーカップにココアの粉末を入れて、お湯を注いだ。味見をすると絶妙。
真ちゃんはお湯を少なめにして牛乳を入れないと怒るんだよな。と思わず苦笑い。

真ちゃんが寝てる部屋に戻って、たまには俺も読者でもしようか、そう言えば真ちゃん、あの時買った本が面白いって言ってたし、

起きたらココアの匂いがしたら真ちゃん驚くだろうな。いっつも俺はコーヒーだから、
真ちゃんのことを考え出したら止まらない。あれもこれも、欲張りになって、沢山溢れ出す。


「早く起きないかなー。風邪早く治れー」


部屋に戻ってベッドの前に座って真ちゃんの顔を覗いた。時折咳払いをしながらも、すやすやと心地良さそうに眠る真ちゃん。一体どんな夢を見てるんだろう。
起きたら教えて貰おう。俺は真ちゃんの夢の中にいるのかな?いたらいいな。


「早く治れー」


小さく呟けば、空気に霧散して消える。
どうか真ちゃんが早く治りますように。








目覚めはココアの匂い


(高尾、そんな所で寝たら風邪を引くのだよ)
(ん……)





*130110

若干タイトルと内容がズレてる気がしますが、気にしなーい


タイトルは無限様にお借りしました。

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