小説 | ナノ
「青峰。身体冷やして風邪引いたらアカンで。」
「アンタもな。」
と言ってやるとアイツは憎たらしい笑みを浮かべると、慣れた手付きで上着を着て、「ほなな」と相変わらずの関西弁で別れを言って、部屋を後にした。
硬いベッドに胸を密着させて、所謂うつ伏せの状態で、首を無理な体制にしてアイツの背中を見つめた。
アイツが部屋から出た後も別に何かを感じたりはしなかった。
感情が遠く離れてしまったような、何処か上の空になる。
「しんど…」
何度目かの、情事後の気怠い身体を起こし、近くに放って置いた、学校指定のYシャツを取って手を通した。
アイツ、今吉とは何の関係も無い。
ただ俺とアイツの利害はピッタリ一致する。ただそれだけ。
バスケでも、そう。
俺がどんなに練習に出なくても、アイツは止めない。
「好きにさせとけ。」
で終わり。
俺が試合に勝てば、それで良い。
つまり、結果が全て。
情事を重ねる理由も同じだ。
自分の欲求が満たされれば、それで良い。
でも時折、感じてしまう空虚感。
ぽっかりと胸に穴が空いたような、むしろもっともっと、と何かを求めてしまう。
欲求は満たされたはずなのに、足りない。もっともっと、欲しい。
性行為では無い。
もっと大事な、心の奥まで温かくなるような、
きっとアイツは、そんな感情知らない。
でも知りたいと願ってしまう、ちょっとした知識欲。
アイツの心は、どんな感じなのだろう。
少し触れてみたい。
「あー…ねみぃ」
柄にも無いことを考えてしまったせいか、頭がガンガンするし、眠気もする。
「寝よ」
1人抜けた淋しさの残る布団を、もう一度被り直した。
ちょっとした知識欲
(もっと知りたい、なんて)
*121226
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