小説 | ナノ
「寒ぅ」
口を少し動かすだけで、冬独特の白い息が漏れる。
それを見ると、冬やなぁ。と感じ、また寒々しくなってしまう。
さっき偶然にも会った青峰と2人、学校の寮に向かって歩く。
「ホンマ寒いわ今日、」
隣で無言で歩みを止めない青峰をチラと見ると、彼も寒いのかマフラーを少し上に上げて、皮膚を隠す。
手が冷たい風に晒され、指先に鈍い痛みが走る。
耐えられずポケットに手を突っ込むと何かポケットでカサッと音がした。
普段はポケットの中は常に空の状態にしてあるはずなのだが…
寒いのを我慢し取り出すと、出てきたのは小さな袋に包まれた飴。
「青峰、」
呼ぶと無言で振り向いた青峰。
顔には何だよ。と露骨に嫌そうな顔をする。きっと彼も早く寮で暖を取りたいのだろう。
「飴ちゃんやるわ」
「は?」
飴の袋をはい、と差し出す。
「いやだから、飴ちゃんやて。」
「…飴ちゃん?」
青峰は不思議そうな顔で俺を見た。
まさか飴を知らないわけは無いだろう。
「何や知っとるやろ?飴ちゃん」
「何で飴にちゃん付けてんの?」
「は?」
2人の動作が固まる。
寒さも忘れお互い顔を見合わせた。
「飴ちゃんは飴ちゃんや。ちゃん付ける理由何てあらへんやろ。てか青峰も飴ちゃん言うやろ?」
「言わねーよ。飴か飴玉だろ」
しばらく言い合いを続けたがこの寒い中、立ち止まって口論など馬鹿らしくなり、また歩きだした。
「………」
肩を並べ暫し無言で歩く。
「青峰、」
「何だよ」
お互い顔も合わせず、前を向いて歩きながら話す。
「飴ちゃんって言ってみ」
「言うか!」
「似合うて、そのコーワイ人相も飴にちゃん付けでもしたら可愛らしい見えるわ」
「余計なお世話なんだよ」
また会話が途切れ無言になる。
切ってしまったのが申し訳無いのか、青峰は少しソワソワと落ち着かない様子。
案外そーゆうのを気にすんねんなぁ。と自分の中の青峰の印象が少し変わった。
「おい」
「何や?」
今日初めて青峰から話しを切り出した。
「あ、飴、ちゃん…貰ってやるよ!」
珍しく顔を真っ赤にして言う青峰。
青峰は、恥ずかしいんだから早くしろ。と言わんばかりに手を出す。
こんな行動を取られるとついつい苛めてやりたくなるが、余りにも必死そうな青峰を今弄ると面白そうだが少し可哀想かと思い、素直に手のひらに置いてやる。
「やっぱ飴ちゃん言うた方が可愛らしいやん」
「うっせぇ腹黒メガネ」
ヤケクソに飴玉を口に放り込む青峰。
その姿が本当に可愛らしく見え微笑んだ。
「録音しとけば良かったなぁ」
「してたらアンタでもシバくかんな」
「冗談や、冗談。」
飴玉で赤面
(青峰も可愛らしいとこあるなぁ)
*121218
大阪の人は飴を飴ちゃんと言うらしいです。
今まで全国共通だと思ってました。
≫誤字修正121218
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