小説 | ナノ
「緑間」

「何だ」


名前を呼ぶと素っ気ない返事。
呼んでは見たがどうすれば良いか分からず次の言葉に困った。
緑間はと言うと目線はいまだに難しい文字の羅列を追って、時折ページを捲るくらい。


「緑間ァ」

「何だ」


日曜日、午前中しか練習が無かったため練習後、緑間の要望で本屋に寄り、そのまま緑間の家にお邪魔した。
久しぶりの休息。久しぶりに2人の空間。
期待してなかったと言えば嘘になる。


「緑間ァ」


暇だ。
それに、少し寂しい。柄じゃ無いから絶対言わねぇけど。
緑間はずっと本に夢中。
ベッドの上をただゴロゴロしてるだけじゃ詰まらない。
痺れを切らし場所を移動して、顔を見られるように緑間の前に少し距離を置いて胡座をかいてみても、反応がないんじゃ暇で暇で仕方無い。


「みど……」


気を引くためもう一度呼ぼうと口を開いたとほぼ同時に視界が揺らぐ。
グイッと腕を引っ張られると身体が前のめりに倒れる。


「いっ「たくないだろう」


身体は倒れる前に支えられ、気付けば抱き締められる形になっていた。
頭が状況を把握した途端、恥ずかしさで顔に熱が集まる。


「相手にしてほしいなら素直にそう言うのだよ」

「うっせ、馬鹿」


ぎゅう、と抱き締められれば、緑間の匂いでいっぱいになる。
心地よくて、でも少しこそばゆい。
肩に顔を埋めて背中に腕を回した。








甘え方なんて習わなかった


(不器用さだけは一級品)




*121216

タイトルは無限様から



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