「兄上、一緒に寝ましょう?」
こてん、と首を傾げたアマイモンの姿にメフィストは頭痛を耐える顔をした。
「アマイモン…そこは私のベッドだ」
【ごいっしょに】
肌触りのよいシーツの上に陣取ったアマイモンは、たしたしと自分の隣の空いたスペースを主張した。
「お前にもちゃんと部屋を与えた筈だ。自分のベッドで寝なさい」
一応、年長者として忠告してみるが、アマイモンの反応は薄い。
「寒いから嫌です」
「ベヒモスでも抱いて寝ろ」
「兄上がいいです」
即答されて言葉に詰まる。その間を埋めるように、小さくアマイモンの声が続いた。
「……兄上がいいです」
(――…か、可愛いっ!!)
不覚にも萌えてしまったメフィストは、それでも精一杯の兄としての威厳を総動員し、崩れそうになる表情を押し留めた。
端から見て、不機嫌そうなその表情にアマイモンはしゅんと意気消沈したが、それがますますメフィストの萌えに拍車をかけていることを、彼は知らない。
「…し、仕方ないな。今夜だけだぞ」
アマイモンの返事を得るより早く、メフィストはベッドに潜りこむことにした。
だからメフィストは、知らない。
「はい、兄上…」
そう呟いたアマイモンの表情が、滅多に見られない花が綻ぶような笑みを浮かべたことを。
背を向けていたメフィストに知られることはなかったけれど。
ただ…
その声があんまりにも柔らかく耳朶を打つものだから。
(少し勿体無い事をしたかな…)
と小さく思って、メフィストは目を閉じることにした。
【端から見れば私達は無表情と不機嫌の応酬でしかないのでしょうが。】
この子の感情は、
私だけが判っていればいい
…なぁんて☆
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