小説 | ナノ



引っ付いては、剥がす。そんな音が廊下からして、メフィストは書類を眺めていた顔を上げた。

1拍を置いて扉がノックされる。

トントン、トン。

そして、声も聞こえた。

「あにうえー」


その声にメフィストは破顔して、勢いよく扉を開けた。


「アマイモン!!」


そこには、人型に戻った弟の姿。
ただし、その外見年齢は子供である。

メフィストの腰までしかない身長を目一杯のばして、弟は笑う。

「あにうえ!!」

小さくて可愛いものが大好きなメフィストの好みを全て兼ね備えた様な小さな小さな弟は。

「だっこして?」

それはそれは愛らしい声を上げて両手を差し出したのだった。



【裸足と薄氷の…】



弟はハムスターから人の形に戻ったがまだ本調子ではないらしい。子供の姿を取ったのは相手を油断させる為と言うよりは、本能がより多くの睡眠や食事を必要としている表れなのだろうと、メフィストは思っている。

「ああ、やはり裸足か。ちゃんと靴下をはけ。冷えただろうに」

抱き上げ、膝の上に乗せると小さくなった足を順に撫で上げた。やはり冷えている。くすぐったいのか弟はクスクス笑いながら時々、堪えきれないと身悶えさせる。

「あ、あにうえ、やだぁ…」

膝に乗せてくれるから、撫でる手が優しいから、裸足を止めないこと。その幼い思考をメフィストは知らない。


「こらアマイモン。そんな声を出すな」

そう言いつつも徐々に這い上がる指先は止まらない。逆に、そんな声がどんな声なのか、アマイモンは知らなかった。

流石は悪魔とでも言うのか、時としてアマイモンの声は甘く響く。それも外見の幼さを裏切る廃退的な空気を纏って。

「くすぐったいですー」

そんな空気に鼻が利くのは私が悪魔だからなのか。ただ分かるのはやってる本人はきっと無意識で、それ故に狂暴なまでの破壊力があって、多分に、抗い難い魅力がある事だけだ。

きっとこの子の吐く吐息でさえ甘いのだろう、と。

口角が上がるのを止められない。

きっと今の私は欲にまみれたひどい顔をしているに違いない。とてもまだ日の高い理事長室でするような顔ではない筈だ。

今、弟に顔を見られるのは耐えられなくて、細い肩に顔を埋めるようにしてアマイモンを抱き締める。鼻腔を甘く満たすのは弟が花の王だからなのか。


子供になった弟を抱き締めることに、内心最初は壊してしまうのでは、と考えていたがどうやらそれは杞憂で済んだようだった。

「わーい♪」

私の膝の上で、俯いた私の髪に擦り寄るように頬をよせる。私の弟は無邪気で愛らしい。

私の腕が、拘束するかのように肩を、腰を、要所要所を抑え込んでいることにコイツは気付いているのだろうか。

―…否、きっと気付いていないだろう。私がそうと躾たのだから。


「―…ふっ」

「あにうぇ?」

「ああ、本当に可愛らしい」


もし私がここで事に及んだとしても、弟は従順にこの白い脚を開くだろう。そうと思えば沸き上がる愉悦に胸が震えた。


「あにうえ」


ああ、本当に今すぐ喰ってやろうか。

向かい合わせに抱き直すと、その滑らかな頬に手を伸ばした。





【薄氷を踏むような理性と悪魔】



誕生日プレゼントのお返しにと送り付けたショタなアマイモンを愛でる変態メッフィー。薄氷踏む前に踏み抜いてる感が満載です。


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