※名前変換なしです。 「なにをそんなに苛々してるのよ、中原」 明け方、荒々しく扉を開け部屋に入って来た中原にわたしはそう声を掛けた。 嗚呼、扉が壊れたらどうするつもりなのかしら。 まあこんな時に異能なんて使わないだろうけど。 彼は黙ったまま、苛立ちを隠さずにわたしが座るソファの隣へと腰掛けてきた。 「ねえ、中原。なんとか言ったらどうなの?久々に訪ねに来たくせに、あんまりだわ」 「......手前、昨日誰といた」 わたしが沈黙に耐え切れず問い掛けると、何時もより低めの声音で返ってきた。 ...昨日。昨日はいつも通り夕方に此処を出て 「嗚呼、そういえば治さんが来たわね」 そうわたしが言った途端、彼の空気が更に鋭さを増した。 嗚呼なんだそう言うことか。わたしは理由に気づき「なあに、嫉妬?」と頸を傾げなから笑った。治さんが店の常連であった事を知っている彼が会う事でこんなに苛つく筈は無い、ならば矢張り。 「名前、読んで欲しいならそう言えば良かったのに」 「うるせぇ」 図星だったようで、わたしから顔を逸らしそっぽを向いた。 嗚呼、僅かに覗く耳が紅く染まっているのが分かり愛しく想う気持ちが溢れてきた。 「ねえ、中也?」と出来るだけ優しく今の気持ちが彼に伝わるようにと想いを込めて名前を呼んだ。 ピクリと動いた手を見逃さずにわたしは畳み掛ける。 「中也、そっぽを向かれたままじゃ寂しいわ。今度いつ来てくれるのか分からないのだから、どうかわたしに顔を見せてちょうだい」 そう言いながら彼の手にそっと触れた。 愛しい貴方 |