03
――[やあ、今日も宇宙一可愛いね。僕の頭は君でいっぱいだ。可愛すぎる罪で逮捕して僕のものにしてしまいたい。そんな顔するなよ、ますます好きになっちゃったじゃないか。……愛してる、心の底から、君だけを]
『イジメだ……』
「よし、電話だ!」
走って電話の子機を取りに行く太一。
紙を持っている手が震え、これを言われたあとのコウちゃんの反応を想像し泣きたくなった。
『こんなこと言って……、もし別れを切りだされたらどう責任とるんだ!』
「神、落ち着けって」
『お、落ち着けるか!今後の運命がかかってるんだぞ!!』
「お前は光子郎がそんなことで別れを切りだす奴だと思ってるのか?」
『や、ヤマト……』
「光子郎のこと、信じてやれよ」
『……顔が引きつってるぞ』
太一が逃げられないよう、コウちゃんの家に電話をかけた状態で俺に渡す。
まだ、出てこない人物に頼むから出掛けててくれと心の中で願いながら数秒待つ。
「はい、泉です」
『あぁ出た……』
「神さん?」
横目で太一とヤマトが笑いを堪えているが見える。
正直泣きたかった。
『こここ、コウちゃん……?』
「どうしたんですか?太一さんの家から電話をかけてくるなんて……」
『い、いや……その……コウちゃんにすぐにでも伝えたいことがあって……』
「はい、なんでしょう」
半分ヤケになって、俺は紙に書かれた台詞を何度も噛みながらもコウちゃんに伝えた。
『きょ、今日も宇宙一可愛いね……!』
言い終えるまでの無言がそれはそれはキツくて、多分きっと無意識に涙が流れていたと思う。
「聞いてるこっちが恥ずかしい……!」
小さく聞こえた2人の声にあとで1発ぶん殴ると心の中で決め、コウちゃんの反応を待つ。
怒っているのか呆れているのか、コウちゃんが話しだすまでの時間が長く感じた。
「なにしてるんですか!ホントにもう!!」
『愛してるのは本当だから……!』
「わ、わかってますよ!」
とりあえず別れるとかそういう話にはならず、心の底から安堵し次はちゃんと直接伝えるとコウちゃんに言った。
電話を切り、2人の方へ向き直す。
「光子郎、なんだって?」
『とりあえず太一に今度説教しに来るって』
「なんでだよ!」
そんなこんなで2回目の勝負も終わったのであった。
「次で最後な」
「絶対に負けない……!」
『俺だって……!』
最初の軽い気持ちで始めた頃が嘘のように本気モードの俺達。
3人で「ジャンケンポン」の合図と共に手を出す。
「きた……!」
『やった……!」
「まけ、た……!」
負けたのは太一。
俺とヤマトは喜びのあまりハイタッチをするほどで、さっきの落ち込みとは逆に早く引くように促した。
「く……」
『く?』
「クラスメートの前で腹踊り……」
「うわあ……」
目の前で顔が青ざめていく太一をニヤニヤしながら見つめる。
自業自得だと、笑いをこらえるのに必死だった。
「誰だよこれ書いたやつ!」
『俺だ』
「今出来ることじゃないから無効だろ!」
『いや、そんなルール聞いてないしな。ヤマトはどう思う?』
「俺達もちゃんとやったんだから、言い出しっぺがやらないのは、なぁ……」
「くっ……!」
悔しそうな太一と、楽しそうな俺とヤマト。
「明日、楽しみにしてる」
『なあ太一、いまどんな気持ち?』
「お前ら……!」
そんなこんなで、俺達の休みは終わった。
もちろん太一は次の日ちゃんと約束を実行し、しばらく周りから腹踊りの八神と呼ばれからかわれたのだが……。
「次こそ負けねーからな……」
「『はいはい』」
本人は懲りてないようである。