お馬鹿3トリオ | ナノ

03

それは、俺達が第三台場に入って10分ほど経過したくらいだったか。


思ったよりも外の光が入り明るいその場所に「懐中電灯、持ってこなくても大丈夫だったな」…なんて言い合えるほどの余裕を俺達3人は持っていた。



くだらない話で笑ったり、さっきヤマトが俺にしたように、逆に俺が2人を驚かしたりして……。


海の方へ駆け寄り肝試しというよりむしろ本当にそこから見える夜景を楽しむように……。






『夜だと涼しいな』


「来てよかっただろ?」


『ま、まあ思ったよりも後悔はしてないな。お前が肝試しなんて言わず夜景を見に行こうと誘ってれば俺だって文句は……』


「男3人でわざわざ夜景を見ようなんて普通誘わないだろ?」


『そ、それもそうか……』






夏だと言うのに、蒸し蒸しした暑さというよりも過ごしやすい風が吹く。


なんなら夏休みの間にでもコウちゃんを誘ってみようかなんて考えながら、隣に立っている太一を見ると、あいつは景色ではなく俺達の後ろに視線を向けていた。






『太一、どうしたんだ?』


「いや、ヤマトが……」


『ヤマト?』






太一の視線の先へ目を向けると、道の途中でなぜか止まって動かないでいるヤマトの姿が視界に入る。


それも奇妙なことに、視線は俺達のいる反対側へと向けていた。






『何見てるんだ?ヤマトのやつ……』


「さあ……、聞いてみようぜ」






夜景を見るのをやめ、2人でヤマトの方へと足を進める。


それに気づいたのかヤマトがこちらへ視線を向けた。






「どうしたんだよ、あっちになんかあるのか?」


「いや、そういうわけじゃないんだ」






じゃあなんだと、その言葉の続きを待つ。


だが、次のヤマトの発言は予想外のものだった。






「こんな時間に俺達以外にも人がいるんだなってさ」


『人?』






確かめるように俺と太一はヤマトの見ていた方へ視線を向ける。






「どこにいるんだよ、人なんかいないぜ?」


『ああ、誰もいないじゃないか』


「いるだろ?ほら、あそこ。赤い服着た女の人」







そうヤマトが指差した方をもう一度見るが、やはり誰もいない。






「なあ……神、見えるか……?」


『……いや、なにも』






ゆっくりと太一と顔をあわせる。


なにか嫌な予感がして……。






「へ、変なこと言うなよ……、ほらこっち見てるだろ!?」


『見てない……が……』


「ヤマト……もしかして……」






太一の言葉が終わる前に目の前のヤマトの顔が見る見る青褪めていく。


それはヤマトだけじゃなくて俺と太一も同じだった。



そのあとはもう……






「「『うわああああああ!!!!!!』」」






叫んで逃げ出したのは言うまでもないわけで。


すぐさまダッシュで人通りが多いところまで出る。

やっと落ち着いたころには息が上がってまともに話せなかった。






「きょ、今日はもう帰るか……」


『そ、そうだな……』


「え!」






太一の反応に了承した俺と、驚きの声を上げたヤマト。


まず、あそこに戻るという選択肢がないいま、帰る以外になにもないと思うが……






『まあ……あれだ、ヤマト』


「俺と神は同じマンションだからさ」


『まあ途中で1人になるわけだが……頑張れ』


「ちょっ……まっ!」





今日ほどに太一と隣同士でよかったと思ったことはない。


正直見たのが俺じゃなくてよかった、いやホントに。






「……家に親父いないからさ」


「そうか……、俺両親もヒカリもミーコもいるからさ」


『俺も両親はいるな』


「ほ、ほら!明日休みだし!」


「……俺の家2人も泊まるなんて無理だぜ?」






なんかヤマトが可哀想になってきて、仕方ないかと提案を出す。






『……俺の家に泊まるか?』


「あ、ズルい」


「神……!」



『ちょっと聞いてみるから待ってろ』


「じゃあ俺も泊まろ」


『お前はいいだろ……!帰れ』






結局その日は俺の家に3人で泊まることになって……。






『そういえば二十歳までに霊が見えたら今後も見えるらしいな』


「よかったー…見えなくて」


「やめろおおお!!!」





――このときの話がしばらく俺達の中でヤマトをからかうネタになったのは言うまでもない。





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